

社員ブログ
小説抄 其の38「横山秀夫『半落ち』」
2011-01-11「半落ち」というのは、半分落ちている(自白している)という意味だが、内容を端的に表しつつ、「何それ?」と思わせる絶妙なタイトルだと思う。それで読み始めたが、最初の「志木和正の章」が終わると、次に「佐瀬銛男の章」になり、つまり、語り手となる人物が代わり、「え?」と。それで改めて目次を見ると、実に章ごとに六人の人物によって語られる構成になっていた。
これまでこうした作りの小説は読んだことがなかった。考えてみると、五木寛之の『内灘夫人』は良介と霧子の二視点だったし、村上春樹や伊坂幸太郎も多視点で書いているが、六人が均等に順番に出てくるというのは読んだ記憶がない。というより、迂闊にやったら失敗するのは目に見えているから誰もやらないのだろう。では、『半落ち』はなぜ成功したか。それは語り手こそ代わるものの、一貫してひとつの事件を追っているからではないだろうか(あれ、常識だったかな)。
しかし、これはなまなかなことではない。プロだって手を焼く。昨年、やはり四、五人の登場人物によってひとつの事件を追った小説を読んだが、途中、なんかまとまりがないな、っていうか、主人公は誰? 俺は誰に感情移入して読めばいいの? と思ってしまったことがあった。でも、吉田修一とか桐野夏生とかはやすやすとやってのける(ように見える)。このクラスになると、多視点とか神の視点とかでも話がとっ散らからない。さすがだ。
『半落ち』の場合、一貫して追っているものは、現職警察官でもある犯人の梶聡一郎がアルツハイマーの妻を殺害した事件である。いや、そうではなく、自白はするが、殺害して自首するまでの空白の二日間については黙秘するという深い謎である。それを隠した梶聡一郎の動機である。これを核に六章が強固に串刺しになっている。これがなければ、たぶんこの作品は空中分解した。
同作は直木賞の候補になったが、実際には起こり得ないことが書かれているという理由で落選になったそうだ。名だたる選考委員の判断だからそうなのだろうが、奇跡的にまとまっているので同業者でもある面々が嫉妬した? なんて思ってしまう。いや、それはいくらなんでも穿ちすぎかな。(黒)
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(市)【ネーミング】上野動物園に来園予定のジャイアントパンダの名前募集
2011-01-06新年明けましておめでとうございます

本年も当ブログおよび月刊公募ガイドをよろしくお願いします。
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上野動物園 ジャイアントパンダの名前募集
締切:1月23日独りごち 其の38「謹賀新年」
2011-01-06遅ればせながら、新年明けましておめでとうございます。2011年の幕開けです。昨年、いい線までいった方も、可燃ごみを量産してしまった方も、今年はより高みを目指して頑張りましょう。作品添削講座も陰ながらバックアップしていきたいと存じます。(黒)
∞TK-プレス 其の38「ゴッホ展にて」
2011-01-04子どもの頃、なぜか惹かれる絵があった。それは実家の洋間に飾られていたが、見た瞬間に「ああ感動」という瞬発力があるわけではなく、毎日見ていても飽きない、しばらくたって見るとやっぱりいい。しばらく見ないと、もう一度見たい。そう思わせる不思議な絵だった。遅効性の麻薬って感じ。無名の画家が描いたものだろうが、なんともいい雰囲気の絵だと思っていた。
絵に関しては、この程度の見識しかないが、ひょんなことから「ゴッホ展」に行くことになった。そこで「なるほど」と同時に「本当?」と思う記述を見た。そこには確か「ゴッホは最初の10年は敢えて素描(デッサン)だけに専念した」とあった記憶がある。調べてみるとゴッホは27歳で画家を志し、37歳で亡くなっているので、この「最初」というのはもっと前の話なのかもしれないが、それはともかく、一足飛びに実作には向かわず、地道に習作を続けた。
デッサンは小説で言えば話の骨格、配分、設計といったことになるが、小説家になろうと思い立ち、そのために向こう10年、10枚、20枚の習作を1000編書こうなんて思う人がいるだろうか。凡人は10編も書いたらすぐに欲を出して実作に取りかかり、狂ったデッサンを技巧でカバーしようとして行き詰ったりするが、ゴッホの場合は生涯に素描を1100点描いた。遅い年齢で画家を志したら、早く結果を出そうと焦るあまり、習作なんてかったるい、なんて思ってしまいそうだが。
ちなみについ最近まで知らなかったのだが、実家の洋間あった絵を引き取ったら、それを見て息子が言った。ゴッホの「アルルの跳ね橋」だと。そうだったの? そんなに有名? どうりで。(黒)
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独りごち 其の37「ネットの功罪」
2010-12-30紙媒体と違い、ネットはいつでも、どこでも作業ができるので便利だ。雑誌ならスケジュールが前倒しになるところ、ネットなら自宅で休み中にアップロードすることもできる。でも、逆に言うと、それは四六時中、仕事できてしまうという環境でもあるな。いいのか、悪いのか。(黒)
∞【映像】ひろしま映像展2011 参加作品募集
2010-12-28公募・懸賞情報ひろしま映像展2011 参加作品募集
締切:1月31日【フォト】2010 天草の宝探し 写真コンテスト 作品募集
2010-12-28公募・懸賞情報2010 天草の宝探し 写真コンテスト 作品募集
締切:1月4日~31日【ノンセクション】「富士の国やまなし国文祭」活性化アイデア募集 ほか
2010-12-28公募・懸賞情報「富士の国やまなし国文祭」活性化アイデア募集
締切:1月20日
「就活朝日」投稿募集
締切:3月31日小説抄 其の37「荒俣宏『本朝幻想文学縁起』」
2010-12-28「名著解題」という授業があった。平たく言えば読書案内だが、誰もが知っている名作は紹介せず、そんな本があるんだという本ばかりをとりあげた。講師は無名の物書きだったが、講義を聞いてただ者ではないと思った。何しろ、ヴォルテールの『カンディード』について、それがいかにおもしろいか90分も語り続けるのだ。しかも、ピカレスク小説、ライプニッツ哲学といった耳慣れない用語も分かりやすく解説してくれる。どんだけ知識があるんだ、この人に知らないことはないのか。心底そう感嘆した。
うっかり無名と書いてしまったが、それは私が無知なだけで、本屋に行くと何冊か著作があった。最初に買ったのは『本朝幻想文学縁起』。学生にはちょっと値が張ったが、空海、平田篤胤、上田秋成、安倍晴明……百物語になぞらえて百の項目に分かれたすべての話に興奮させられた。特に、当時はあまり知られていなかった陰陽師、式神といったあたりは震えるほど興奮し、これはこのまま小説にしたら大ヒット間違いなしだと思った。後年、先生は小説を書き、日本SF大賞を受賞、映画化もされたが、それは『本朝幻想文学縁起』を素材に物語を作ったといったものだった。
作者は荒俣宏、陰陽師が出てくるその小説は『帝都物語』だが、公募ガイドの巻頭ページを担当していた頃、先生に原稿を書いてもらおうと考えた。しかし、当時、先生は居所が知れず、噂では某出版社に居候しているとのことだった。早速、電話してみる。「そちらに荒俣先生はいますか」「はあ、いますね」。どうやら“いる”らしい。「お帰りは?」「さあ?」。その言い方には、そんなこと私が知るかいなってなニュアンスがあった。まさか無断で住みついているわけじゃないよなと思ったが、何度か電話するうちにやっとつかまり、原稿を書いてもらうことができた。
原稿には、サラリーマン時代の十年間、睡眠時間を削って翻訳や評論を書いたという壮絶な修業時代が書かれていた。先生みたいに博識になりたいと憧れるのは簡単だが、睡眠時間三時間を十年と言われると怯んでしまう。憑りつかれたように書くのも快感だけど、貪るように眠るのもまた捨てがたいしねえって?(黒)
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