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社員ブログ

  • 小説抄 其の13「吉本隆明『源実朝』」

    2022-09-12
    小説抄

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    15歳のとき、太宰治の「右大臣実朝」を読み、源実朝に強烈なシンパシーを感じた。それで『金塊和歌集』を読んだりしたあと、辿りついたのが吉本隆明の『源実朝』だった。
    後年、吉本ばななが『キッチン』でデビューし、「吉本隆明の娘だってよ」と噂になったが、今は逆ですね。「吉本隆明って誰? あ、吉本ばななのお父さんなのね」って。

    さて、実朝の和歌。鎌倉時代は古今和歌集の時代。つまり、万葉集的な直截な和歌はダサいとされ、掛詞などのテクニックを駆使するようになったとき。にもかかわらず、実朝の和歌は万葉集的なわかりやすい和歌だ。家庭教師はあの藤原定家。なのにあの素朴さ。人柄なのか。

    大海の磯もとどろに寄する波われてくだけてさけて散るかも

    「割れて、砕けて、裂けて、散るかも」の畳語はものすごく写実的。掛詞といった小賢しいテクは一切なし。写生文を提唱した正岡子規も絶賛するわけだ。

    箱根路をわが越えくれば伊豆の海や沖の小島に波の寄る見ゆ

    これも写実的。見たまま、ありのままに詠んでいる。確か、箱根の十国峠にこの碑があった気がするが、この前、芦ノ湖から三島まで歩いたとき、なかったんだよなあ、勘違いだったかなあ。

    世の中は常にもがもな渚こぐ海人の小舟の綱手かなしも

    百人一首にもなった和歌。漁師が海から帰ってきたのを見て、世の中はずっとこうだったらいいのになあと詠んでいる。しみじみするね。

    山はさけ海はあせなむ世なりとも君にふた心わがあらめやも

    「君」というのは恋人か、妻の坊門信子か。残念、「君」とは後鳥羽上皇のこと。後鳥羽上皇は和歌集の編纂もする出版プロデューサー。そういう点でも尊敬していたんでしょう。のちに承久の乱を起こされるけど。

    時によりすぐれば民の嘆きなり八大龍王雨やめたまへ

    台風が来たのでしょうか。わかりやすい和歌。実朝は政治はさせてもらえませんでしたが、民のことは思っていたんでしょう。一応、鎌倉殿なので。

    もの言わぬ四方の獣すらだにも憐れなるかな親の子を思う

    親の幸薄い実朝が歌うと切ない。獣ですら親は子を思う。いわんや人をやと言いたいところだが、鎌倉時代は親族で殺し合いばかり。実朝は甥の公暁に殺され、父親の頼朝は弟の範頼、義経を殺し、頼朝の兄、義平は叔父の義賢を殺し、義賢の子、木曽義仲は範頼・義経と戦って死に、義仲の子、義高は頼朝の刺客に殺され……。まあ、法治国家じゃないからやりたい放題。

    身につのる罪やいかなる罪ならん今日ふる雪とともに消ななむ

    なんで将軍になってしまったのか。凡人が権力を得ることが罪なのか。あまり有名ではない和歌だが、これが一番心に沁みる。

    出でいなば主なき宿となりぬとも軒端の梅よ春を忘るな

    鶴岡八幡宮で公暁に暗殺された日に詠んだ最後の和歌の一つ。菅原道真の飛梅を彷彿とさせる。ぬしなき宿となると予感していたのか。
    15歳のとき、実朝のような人生になる予感がありましたが、全然違いました。よかったのか、悪かったのか。今もってわからず。
    (黒田)

  • 鹿児島・開聞岳へ

    2022-09-08
    山記

    霧島の翌日は、開聞岳です。
    霧島の翌日は、開聞岳です。


    キャンプ場を過ぎて、二合目が登山口です。 この先、トイレはありませんとのこと。
    キャンプ場を過ぎて、二合目が登山口です。
    この先、トイレはありませんとのこと。

    最初のうちは、薄暗くジメジメした登山道ですが。
    最初のうちは、薄暗くジメジメした登山道ですが。

    ところどころ開けた場所が出現します。 ずーっと樹林帯とかじゃなく、適度にメリハリがついているので楽しく歩けます。
    ところどころ開けた場所が出現します。
    ずーっと樹林帯とかじゃなく、適度にメリハリがついているので楽しく歩けます。

    高度が上がってくるとこんな感じ。 岩場が多くなってきました。
    高度が上がってくるとこんな感じ。
    岩場が多くなってきました。

    で、また開けた場所。 独立峰なので、景色がいいのです。
    で、また開けた場所。
    独立峰なので、景色がよいのです。

    山頂直下は、ちょっと急です。
    山頂直下は、ちょっと急です。

    山頂到着。 ここも百名山。 それなりに人がいます。
    山頂到着。
    ここも百名山。
    それなりに人がいます。

    山頂からの景色。 この山は、全方位見渡せるのが魅力ですね。
    山頂からの景色。
    この山は、全方位見渡せるのが魅力ですね。

     
    で、下山しました。 登山踏切を横断します。
    で、下山しました。
    登山踏切を横断します。

    JR指宿枕崎線に乗って帰ります。
    JR指宿枕崎線に乗って帰ります。

  • あの夏に戻ったような

    2022-09-05

    先日、藝祭2022に行ってきました。
    そうです。あの天下の東京藝術大学の学園祭です。
    高校の同期2人が藝大に通っているので、その展示&アートマーケットが目的です。
    学年に美大を目指していた人は3人しかおらず、つまり私以外全員藝大生という……(笑)
    まあそんなことは置いておいて、早速入場です。
    藝大の門をくぐると、藝歳名物の御神輿がお出迎え。

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    超超かっこよすぎる。
    これは学部1年生が作るという恒例行事なんですよね。

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    こちらが神田明神賞の神輿。
    工芸と日本画が制作にあたったそう。か、かわいいし造形がすごすぎる。
    学内の展示を約3時間かけてまわり、久々に同期3人で集合しました!
    3人そろうのは4年半ぶり!懐かしすぎて、自然に涙がでました。
    彼女たちは、運営があるので30分くらい話して解散。
    「絶対今度飲もうね。」と約束するのが、なんだか大人になったなあと感じて嬉しいような寂しいような。

    不忍池の周りを散歩して帰ろうと思ったら屋台が並んでいました!
    大興奮のあまり半日何も食べてなかったので、つぶ貝とビールを購入。

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    蝉の声と、少し涼しい風を受けて夏の終わりを感じてしまいちょっとおセンチな気分に。
    ビールを飲みながら、受験期のことを思い出しました。
    本当につらかったけど楽しかったなあ。
    夏場の熱い教室で、勉強して絵描いて。
    あの頃に、戻りたいような戻りたくないような。
    次に会った時はたくさん思い出話をしよう。そう思ってビールを飲み干しました。

    mm

  • 週末だけ、美術館に住みたい

    Yです。
    先週末は東京国立近代美術館で開催中の、
    ゲルハルト・リヒター展」に行ってきました。

    ドイツ出身のゲルハルト・リヒターは、現存する現代アートの巨匠のひとり。
    「ドイツ最高峰の画家」と呼ばれています
    生誕90周年、画業60周年という記念すべき年に、日本で大個展が開かれたのは本当にありがたい!
    (しかも16年ぶり!)

    写真を模写しつつ、キャンバス上でピンぼけさせる「フォト・ペインティング」は
    数あるリヒターの作品でも有名な手法ですが、
    実際に見ると「絵がうまい!!!」の一言に尽きます。
    卓越した描写力に、ピンぼけというオリジナリティが加わり、見ていて気持ちがいいのです。

    抽象絵画も、もはやその色彩配置や絵肌の再現方法が全くわからない。
    だからこそ引き込まれる。ずっと眺めていたいです。部屋に置きたい。

    個人的に、リヒターの持つ哲学や、作品制作の変遷は、
    現代アートのなかでも比較的わかりやすく、一貫性があると思いました。
    「現代アート」って、とっつきにくそうですが、
    インタビューなどで制作意図が詳しく残っているぶん、理解しやすい場合もあるんですよね。

    リヒターの作品はほかにも、上野・国立西洋美術館で開催中の
    自然と人のダイアローグ」(~9/11)や、
    箱根・ポーラ美術館の開館20周年記念企画、
    モネからリヒターへ」(~9/6)
    など、生で見られる機会がたっぷり用意されています。

    どちらの展示も(たしか)19世紀ごろの抽象絵画とリヒターの作品が
    並べて展示されていたのですが、
    まったく引けをとらないその迫力に圧倒されました。

    特にポーラ美術館では、
    真っ白の壁にリヒターの抽象絵画とモネの絵画のみが展示され、
    新旧の抽象絵画が堪能できる空間に。うまい。

    モネと自分の作品が並ぶって、どんな気持ちなんですかね?!
    リヒターほどの巨匠になれば些末なことなのでしょうか……。

    今度は、2022年の目玉(?)である
    国際芸術祭「あいち2022」(旧:あいちトリエンナーレ)のために、愛知県まで行ってきます!
    3年に1度開催される、国内最大規模の国際芸術祭です。
    奈良美智や塩田千春の作品も展示されるので楽しみ。

    前回行ったときに食べた味噌カツの味が忘れられない……。
    愛知県名物モーニングも楽しみな、Yでした。

  • だいたい2週間に1度くらいの頻度でブログ当番が回ってきます、今日から9月。
    今回はちゃんと執筆間に合いました。
    カレンダー上の夏が終わっても、暑さはしつこいですね。

    ここ数週間、首がやたら痛みます。
    夏とか関係ないんです。寝違えたわけでもない、
    好きな曲を聴きながら頭振りすぎたわけでもない。
    拙い8の字か折り畳みしかできないし(通じる人いますかね)。

    髪の毛の長さが現在過去最長ですが、
    伸ばし過ぎて重みに耐えかねているのか。
    我が首、自分の毛髪の重みにも負けるのか。ヤワすぎないか。

    耐えかねて休日に整骨院に行ったら、
    子どもの頃から視力が悪く、
    そのせいで姿勢も悪く(PCの画面とか首を伸ばしてやたら近づいて見ようとしちゃう)、
    首から肩にかけての慢性的で異常な凝りを抱えてきたため、
    限界が来て鈍痛が続いているんでしょうね、とのことでした。

    これも職業病と呼ぶのでしょうか。
    肩こりや疲れ目、腰痛など、
    言わずとも何か抱えている社会人はたくさんいるんでしょうね。

    Amazonで夜な夜な健康器具を調べるようになりました。
    おすすめのものがあったら知りたいです。

    あつ(回すとごくまれに、およそ人体から発されたとは思えない形容しがたい音を出す首です)

  • 今更モンスターズ・ワークのお話を

    にわたしはディズニー作品の中でモンスターズ・インクが一番好きです。
    その前日譚のモンスターズ・ユニバーシティもまあまあ好きです。
    ディズニー・プラスで配信されている、モンスターズ・インクのあとの出来事を描いたアニメシリーズ「モンスターズ・ワーク」も昨年観たのですが、あまり楽しめなかったのでうろ覚えですが今回はそのお話を書こうと思います。ネタバレになってしまうので嫌なら読まないでください。

    怖がらせ屋という、子供の悲鳴を集めてエネルギーを作る会社の花形の部署に行きたかった新卒社員のタイラーという主人公が、会社の方針転換(怖がらせ屋廃止)によって雑務メインの設備チームに配属されるところから物語が始まります。新設された花形部署である、子供の笑い声を集めてエネルギーを作る「笑わせ屋」になりたいタイラーは設備チームの最低限の仕事をおろそかにしつつ、不正とかもしつつ笑わせ屋になろうとする。
    みたいなお話で、「メディア部でアイデアを出して面白い企画をやったり、企業にオリジナリティのあるコンテスト提案をしたりしたいなあ」と思っていたのに、システムエンジニア&雑務担当になってしまった私に刺さりそうな雰囲気はかなりあったのです。
    が、なぜかタイラーに感情移入できない。最終的にいろいろあってタイラーは設備チームを捨てて笑わせ屋になるのですが、それも「なんかイヤだなぁ~!!」という感じでした。偶然がいろいろ重なって、これからは希望の部署で楽しくお仕事できるね!みたいな感じがすごく「イヤ」でした。(マイクの声優が爆笑問題の田中さんじゃなくなってしまったのもかなりイヤでした)

    世の中そんなに甘くはないやろ!そんなにうまくチャンスが回ってくるわけないやろ!キー!!!と思いながら見ていたのですが、楽しめなかったのはひょっとして「妬み」なのかな、と最近ふと思いました。モンスターズ・インク社のみなさん、人間の妬みをエネルギーにするように方針転換することがあれば、ぜひ私の元に来てください。東京タワー一本くらいなら光るくらいのエネルギーになるはずです。🗼

    「やりたい仕事をできている人」がこの作品を見て何を思うのかに興味があるので、そういう方がいらっしゃったら是非聞かせてください。

    おしまい

  • 好きな漫画と聞かれたら、答えてあげるのが世の情け

    「好きな漫画は何ですか?」
    よく話題の振りとして聞かれることが多い質問ではありますが、私の場合はなかなか困ってしまうことが多いです。
    好きな漫画とは?とこの問いに対して今まで生きていた人生観や性格が悟られそうな気がしてならないためである。
    もはや好きな漫画を言うだけで自己紹介になるレベルである。

    少し前にツイッターで話題になった『好きな漫画を答えるのはHUNTER×HUNTERにおける"錬"を見せろと同じ』というのは理にかなっているのである。

    さて、肝心の好きな漫画ですがたくさんありすぎて書ききれないです(笑)

    まあ、あえて一作挙げましょう。
    2021年の終わりから今年の始めぐらいまでWeb連載されていたタイザン5氏の『タコピーの原罪』です。
    今年、最終回を迎えた漫画では1位、2位を争う衝撃作です。
    タコピーの原罪上巻

    第1話を読んだときはドラえもんテイストな漫画でハートフルな物語なのかと思いきや全然違いましたね!
    えぇ、第2話からジェットコースターよろしくハートフルボッコですわ☆

    この漫画を読んでドラえもんが徹底的に無能で使えない道具しかなく、何があってもニコニコしながらハッピーハッピー言ってるだけの奴になると相当危険な奴になることを学びました。
    タコみたいな使えない宇宙人がドラえもんポジションなのですが、その本質は悪意の無い純粋さであり、ドラえもんを陰湿にした存在です。

    似たようなキャラで10年ぐらい前に『魔法少女まどか☆マギカ』というアニメに出ていた"キュウべぇ"がいますが、こちらは人間とは論理感がずれているだけなのでまだマシな気もしてくるレベルです。
    ことタコピーについては、"どんな時でも"ハッピーハッピー言ってるので危険です。

    もう、この物語はタコピーの要所要所でのズレた行動が"原罪"になっていると言っても過言ではありません。

    その他のキャラクターも魅力的なのが続きます。

    ・みんなハッピー?壊滅的に何もできないタコピー
    ドラえもん的ポジションのハッピー星人。口癖のようにピッピ、ピッピ言う。ウザさと無能さを併せ持つタコである。
    ハッピー道具でみんなをハッピーにする使命があるが使えない道具ばかり。
    善悪の判断が無く(最初は)人間の感情を理解できない。
    唯一、しずかに褒められた道具がまりなを殴打したハッピーカメラとは、これいかに……!

    ・サイコパスヒロイン、久世しずか
    小学4年生でありながら、まりなちゃんからいじめを受け、愛犬を保健所送りにされる可哀そうな少女……。
    ……と思いきや一変。東くんを手玉にとって犯罪を進める、とんでもないサイコパス且つ魔性の少女であった。

    ・もう一人のヒロイン、雲母坂まりな
    冒頭からしずかをいじめるいじめっ子。理由はある。家庭環境も複雑。
    別の世界線では高校生。父は、しずかの母のところへ、それがきっかけで家庭崩壊、母から虐待を受け、彼氏である東くんをしずかに寝取られてしまう。

    ・しずかちゃん大好き、東直樹
    頭は良いけど、しずかちゃんには逆らえない少年。
    頼まれたら犯罪にも加担します。そして、最後はしずかちゃんに言われるがまま―――。

    ね、魅力的なキャラクターばかりでしょ?まともなキャラが一人も居ない(笑)
    上下巻の2冊で完結な物語ですが、最初からフルスロットルで飛ばしてくるから面白いのですよ。
    全体的にストーリーは鬱で暗い展開ですけど、展開としてはまとまっているし読みやすいです。
    好きな人はハマるし、嫌いな人は嫌悪する、そんな漫画。

    詳しいお話はご自身で読んでほしいですが、一つだけ言わせてください。
    最終的にタコピーは原罪を清算することになります。
    彼は最後まで有能ではありません。
    しかし、一つだけハッピーな出来事を残して逝きます。

    それをハッピーエンドと受け取るかは、あなた次第です!

    YuE

  • 文化庁・メ芸が作品募集せず!?





      朝日新聞の一報を目にしたとき、衝撃を受けました。 プランナーの宮洋輔です。
    みんな大好き、メ芸が「役割終えた」?! 作品を募集しない?!?!?!  

      アート・エンターテインメント・アニメーション・マンガの4部門で募集され、優れた作品を顕彰。それら作品鑑賞の機会ともなる一大イベントとして25年間続いてきただけに、にわかには信じられませんでした。   報道だけでなく、一次情報を確認せねば、と公式サイトを見にいくも、現状では……  
    メ芸1
      令和4年度文化庁メディア芸術祭について NEW2022.8.24   第25回の受賞作品展は9月16日(金)~9月26日(月)に日本科学未来館他で開催します。 なお、令和4年度については、作品の募集は行わないこととなりました。   https://j-mediaarts.jp/news/r4/

      のみ。なぜそういうことになってしまったのか、杳(よう)として知れません。今年のみ募集せずという暫定措置なのか、今後も募集せずなのか。ここからは読み取れません。   メ芸に応募すること、受賞することを目標にしていたクリエイターも多かったのではないでしょうか。また応募者だけでなく、作品展示を楽しみにしている人も少なくないでしょうから、気になりますね。(もちろんジブンもその一人です)   朝日新聞の取材によると……  
    文化庁の担当者は「当時に比べてメディア芸術の振興は進み、国内外から公募して顕彰するという現在の方法は一定の役割を終えたのでは。今後は国際的な発信により力を入れていく局面ではないか」と説明。   https://digital.asahi.com/articles/ASQ8S6VTBQ8SUCVL03C.html

      とあり、これが本当であれば今年だけ募集しないとかではなく、メ芸自体が終了なのか?と。コンテスト専門メディア『公募ガイド』として、編集部でメ芸の今後を取材してくれないかな…チラッチラッ(と編集チームの島に視線を送る)   (文化庁が京都に移転することだし、メ芸のメイン展示が京都で?!などと期待していたまでありました。京都旅行の一つのきっかけにもしたかったのにな……)  







  • 読書遍歴そのいち

    2022-08-24
    ゆとり日記

    こんばんは、
    いまはやり?のNFTについてちょいちょい調べているのですが、
    技術的な話が全く分からず困っています、ババです。

    この前友人らとオンライン飲み会をしていると
    子持ちの女性から
    「なんで本を読むようになったの?」と聞かれました。
    そろそろお子さんが小学校に上がる年で、お母さんとしては本を読むようになってほしいらしい。
    でも今のところ絵本にも興味を示さずどうしようかと考えている、とのことでした。

    残念ながら有益なことはお伝え出来なかったのですが、
    私個人としては明確なきっかけがあります。

    小学校5年生の夏休みに転校をしてしまい、
    夏休みに遊ぶ相手がいなくなってしまったのです。
    そこで親に半強制的に図書館に連れていかれ、
    読まさせられた本がシャーロックホームズ。
    暇だったこともあり、あっさりハマってしまいました。

    そこからはシャーロックシリーズを読みつつ、
    江戸川乱歩の怪人二十面相シリーズなど少し昔の児童書を読み始めます。

    新しい学校に通い、友達ができ始めたころにちょうど世間で流行っていたのが
    ハリーポッターシリーズとダレンシャンシリーズ。
    どちらも私の世代で読んでない人の方が少ない(と思っている)児童書です。
    ダレンシャンは刊行ペースも比較的早かったのですが、図書館でなかなか借りることもできず
    本屋さんで通って立ち読みして読んだことを覚えています。
    ハリーポッターは何とか買ってもらいました。これもまたドはまりしました。

    そこで海外ファンタジー児童書を読み始めるようになり、
    今度は岩波少年文庫や指輪物語、黄金の羅針盤シリーズなどに手を出し始めます。

    読むペースが遅い(いまも)のと、本を買うお金があまりなかった(いまも)こともあり、
    小学校時代は上記のシリーズを読むだけで手いっぱいでしたが、
    中学校からは新潮文庫と朝の読書時間のおかげで本を読むペースが少し早くなっていきます。

    書いてて思いましたが、子供に読ませたいときは流行りモノを買い与えるのが一番なのかもしれませんね。

    続きはまた次回に。

  • 小説抄 其の12「戸川幸夫『高安犬物語』」

    2022-08-24
    小説抄

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    戸川幸夫は毎日新聞の記者であり作家志望ではなかったが、友人の作家に誘われ、大衆文学の大御所、長谷川伸が主催する新鷹会という小説の勉強会に参加する。3ヶ月後、君も何か書いてこいと言われ、旧制山形高校(現山形大学)時代の思い出を書いた『高安犬物語』を提出した。その処女作がなんとその年の直木賞を受賞してしまうのである。すると、師匠の長谷川伸は「こうなった以上は新聞記者はやめて……」と言い、戸川さんも専業作家になる。なんていう劇的な人生か。

    当時(昭和29年)、新人文学賞は少なく、新人の多くは長谷川伸のような重鎮の推薦でデビューしていたのだが、『高安犬物語』もそのような形で「大衆文芸」に掲載され、そのまま直木賞を受賞した。「大衆文芸」は新鷹会の会誌といっていい面もあり、ここでは村上元三など新鷹会の同人が多く活躍、のちには池波正太郎や平岩弓枝も輩出する。
    ちなみに「大衆文芸」は白井喬二・江戸川乱歩が創刊させた雑誌だったが、経営難のため休刊していたのを長谷川伸らが復活させた。長谷川伸が関わったのは第三次「大衆文芸」になる。

    さて、『高安犬物語』。高安犬とは、山形県の高安地方に生息し、昭和初期に絶滅してしまったマタギ犬であるが、戸川さんはこの高安犬より先に日本狼に興味を持ち、「もう一匹も残ってはいないのだろうか」と日曜ごとに自転車を駆って探しまわったという。しかし、山犬(日本狼)が撃たれたとか、米沢の古老が狼を飼っていたといった噂を聞きつけては調査してみたが、いずれも野生化した日本犬に過ぎず、ついに発見には至らなかった。

    それもそのはず、日本狼は明治期に絶滅してしまっていた。亡びゆく種族に対して愛惜を持っていた戸川さんとしては無念だったと思うが、しかし、このときの情熱と悔しさは、昭和44年のイリオモテヤマネコ発見として実を結ぶ。野生ネコの新種発見は70年ぶりのことであり、当時は20世紀最大の生物学的発見と言われた。戸川氏55歳のときの偉業である。

    さて、いきなり作家になってしまった戸川さんにとっては、それからが作家修業の時代となるのだが、そんなある日、同門の新田次郎がこう言った。「(勉強会は)まだまだ生ぬるい。もっと罵りあい、つかみかかるほどの厳しい批判をしあおうじゃないか」と。戸川さんはそれに賛同し、池波正太郎らを誘って「炎の会」という組織を作り、毎月一度、那須山中の宿に泊り込んで研鑽会をしたそうだ。その甲斐あって新田次郎は山岳小説の、池波正太郎は時代小説の第一人者となり、戸川幸夫は動物文学の草分けとなる。まさに大衆文学の梁山泊だった。
    (黒田)