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社員ブログ

  • TK-プレス 其の41「ウィスキーぼんぼん」

    2011-02-15

    中1の頃、親友の岡崎君が何かを読んでいた。「それなに?」と聞くと、「小説」とそっけなく言った。私は息を飲んだ。小説というのは大人が読むもので、子どもには到底嗜めないものだと思っていたから。なのに岡崎君は平気な顔をして読んでいる。それはたとえて言えば、中学生がズボンのポケットからトリスの小瓶を取り出し、ラッパ飲みするのを目撃したようなものだった。


    岡崎君は「貸そうか」とも言った。「難しいんでしょ?」徳富蘆花だとか徳田秋声だとか四字熟語としか思えない作家を連想し、早くも腰がひける私。しかし、岡崎君は「全然」と言って笑った。それは「コーラで割ってあるから平気だよ」と言われたようなものだった。誘われるまま一口舐めてみる。「いける!」そう思うと同時に、俺はもう子どもじゃないぞ的な感慨が押し寄せてきた。


    勧められた本は柳川創造の『いざ、カマクラの五人組』という作品だった。レーベルは秋元文庫、つまり、昭和40~50年代に流行ったジュニア小説だ。私はこの一冊で小説に嵌まり、その後、赤松光夫や富島健夫などを次々と読破していった。当時は、こんなおもしろい話を書くのだから、この人たちはソーセキやオーガイに匹敵する作家だと思っていたが、後年、書店の官能小説の棚で赤松、富島両氏の名を見たときは、勝手な思い込みながら、なんだか裏切られた思いだった。


    柳川氏については、その後、文学の世界でその名を聞くことはなかった。気になって調べてみると、もとは脚本家であることが分かった。当時のジュニア小説は書き手不足だったから、筒井康隆、眉村卓といった大人の小説の作家だけでなく、脚本家にも声がかかってアルバイト感覚で書いていたのだろう。そう言えば、富島健夫ももとは芥川賞候補になったことのある純文学作家だ。


    それを大人の文学の代用品と言っては叱られるが、今思えば、私たち子どもが、本物だと思って大人を気取って飲んでいたのはウィスキーではなく、ウィスキーぼんぼんだったようだ。ただ、少ないながら、中にはジョニーウォーカーやオールドパーが入ったものも確かにあった。(黒)

  • 【アート】花輪線全線開通80周年記念 花輪線イメージキャラクター募集

  • 【アート】御堂筋オープンフェスタ2011 ポスタービジュアル募集 ほか

  • 【学生向け】国際子供芸術財団(ICAF)デジタル・絵画コンクール 日本代表募集

    2011-02-10
  • 独りごち 其の43「真実一路の道なれど」

    2011-02-10

    山本有三の『真実一路』には、「真実一路の道なれど、真実、鈴ふり、思い出す」とある。山本有三はこれを自作だと思っていたが、あとで北原白秋の「真実一路の旅」の一節だと気づいたそうだ。白秋が好きで、自分で作ったと勘違いするほど繰り返し暗唱していたからだ。こういうことは、でもよくある。知識を持って生まれてきたわけではないから、要するにほとんどの思考は先人からの借り物と言えなくもない。(黒)

  • 公募ガイド3月号 本日発売です!

    2011-02-09

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    11G03hyoshi
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    ■特集
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     短い文章公募の入賞のコツを教えます。

    ■インタビュー
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     SMAP「青いイナズマ」、Kinki Kids「愛されるより 愛したい」
     などのヒット曲を生み出した作詞家

    【今月の一冊】
    「つるかめ助産院」小川糸さん

    【CREATORS】
    深川栄洋さん
     映画「白夜行」監督

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    ※詳しくはこちらをご覧ください。


    次号はいよいよリニューアル。
    新連載、特集もお楽しみに

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    毎日寒くて、防寒優先のダサ服で過ごす毎日です…。
    暦でなく気候でいうところの春が、本当に待ち遠しい。
     (市)

  • 【ネーミング】練馬区アニメキャラクターアンケート投票

  • 【アート】びわ湖源流の郷たかしま”農産ブランド認証マーク募集 ほか

  • 小説抄 其の40「重松清『ビタミンF』」

    2011-02-08

    たまたま同年代だったとか、同窓、同郷だったりして、急激に親しくなれるときがある。それまでと何が変わったわけでもないのに、何か共通するものがあると、説明せずともなんだか分かり合えるような気になる。本の場合も同じで、いくらいい本だと言われても、共通する何かがあるという思い込みがなければ読む気にはなれない。戦前などは、たいがいの日本人が戦争と貧困を体験してきたから、それを書けば共感を得られたが、現代人の場合、そういうものはまずない。


    あるとき、Bさんという方と話していて、「私が読んでもおもしろい小説ってありますか」と聞かれたことがある。「私が読んでも」というのは、小説というものを必要としない人という意味だろう。当時、Bさんは45歳、二児の父だったが、私もそんなことを思ったことがあった。学園ものを読む年でもないし、苦悩と挫折の青春は既にして遠い。それなら恋愛ものはどうかというと、惚れた腫れたの色恋はかなり縁遠くなっている。第一、それを問い詰めたい気持ちがない。


    難解なのもかったるい、仕事を連想させるようなものもだめ、時代小説というほどの年齢でもない。推理小説は? 謎解きだけでは食指は動かないし、それにその手のものはさんざん読んだ。ならば、いっそポルノ小説は? 成人漫画を読む感じでストレス解消になる? ところが、そうはならない。小説は文字でしかないから、即物的に興奮するわけではないし、そのためだけだった面倒くさい。そもそも、なんの深みもないのでは読む意味がない。要するに、読むものがない。


    そんなとき、重松清を読んで、なぜかはよく分からないが、「分かる」と思った。数十年前、いじめが社会問題になり始めたとき、多くの大人は「いじめなんか昔からありましたよ、意気地がないんです」と言っていたが、そういう見方はしていなかった。もしかして作者は同年代かもと思ってプロフィールを見たら2歳下だった。ちなみに、私の薦めで『ビタミンF』を読んで「同世代の親にしか分からない感覚」と感想を漏らしていたBさんは、重松さんより1歳下だった。(黒)

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