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社員ブログ

TK-プレス 其の39「順番待ちの本」

2011-01-18

最寄りの小さな書店には売れ筋の本しかないから、のんびり構えていると欲しかった本がすぐに消えてしまう。だから、少しでも気になった本は買って確保しておきたいのだが、そんなことをしていたらすっからかんになってしまうのでそれはしない。しかし、一度気になった本はしばらくするとまた気になるもので、一応また探してみるのだが、たいがいはない。ならば注文するしかないが、買うほどでもない本だったりすると困る。ネットでは立ち読みできないし。


その点、大型書店は蔵書が豊富でいいが、豊富すぎて困ることもある。中でも渋谷にできたMARUZEN&ジュンク堂は要注意だ。何しろ当人もすっかり忘れていた「気が向いたら買おう」がごろごろ見つかるから、あれもこれもと棚から抜き出し、小脇に抱えるようにしてレジに行ったら、牛丼屋なら三ヶ月は毎日通えそうな額が飛んでいった。あんな店、迂闊に近づいてはいかん。どうせ半分以上は買っても読まないのだから。そうは思うのだが……。


出久根達郎さんも書いていたが、買った本を並べ、どれを読もうかと、数ページずつつまみ食いのように取っかえひっかえ読んでいるときが一番楽しい。その中のお気に入りの一冊をゆっくり読むのはもっと楽しい。しかし、仕事柄、明日までに読まねばならないという事態になることもあり、そうなると焦るし、遅読の私にはつらい。何より、気持ちに余裕がないと、おもしろさを探すという気になれない。どうかすると、「なんだよ、この書き方は!」と頭にきてしまう。


小冊子「これから出る本」ならぬ、私が「これから読む本」は、本棚には入れず机の上に置いておくのだが、その中にいつまで経っても机の上からなくならない本がある。早く読みたいのだが、話題の新刊が次々と横入りしてくるし、仕事で読む本は優先しなければならないから、「いつかそのうち」はなかなか訪れない。私の怠慢もあって、国木田独歩の『武蔵野』や二葉亭四迷の『浮雲』はかれこれ三十年は順番待ちをしていると思うのだが、いったいいつになったら読むのやら。(黒)