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社員ブログ

  • 行けばわかるさ!

    2016-12-15
    山記

    ガボッチョ。

    その山の名前を見たとき、「行かねばならない」という思いがこみ上げてきたのです。

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    だいたい、山の名前が“ガボッチョ”っておかしいでしょ。

    冗談でつけた名前?
    の割にはちゃんと地図に載ってるし。
    あ、googleにも登録されてるよ。

    ネットで検索しても、登山の履歴はほとんど見つかりません。
    登山道すらないので、だれも行かないわけです。

    名前の由来は?
    どんな意味があるの?

    こんなときは行動あるのみ。
    そう、行けばわかるさ!

    8月某日。
    夏休みを取得して行ってきました。
    場所は霧が峰のすぐ近く。

    登山道が存在しないので、適当にあたりをつけて、藪の中に入っていきます。
    最初は下り。

    藪の深さは肩ぐらい。
    獣道が錯綜しているので、これをたどっていきます。

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    気がつくと、道が途切れていたり、蛇行していたり。
    人がつけた道じゃないので、まあしょうがない。
    藪をかきわけ、一歩一歩前進していきます。

    と後ろから、何かがすごい勢いで近づいてきました。
    巨大な物体。
    いったい何が?

    藪の中から飛び出してきたのは、立派な角をもった鹿。
    真横を、ジャンプしながら駆け抜けていきます。
    振り上げた鹿の足が、鼻先をかすめました。

    間一髪。
    あのサイズだと、追突されたら大怪我します。
    もう心臓バクバクです。

    すげー、なんか探検っぽくなってきた。
    テンションがあがります。

    そして前方には、“ガボッチョ”が姿を現します。
    いかにも謎の山、という佇まい。

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    さらに進んだところで、人工物を発見しました。
    木で囲ってあるようですが。
    こんな人が来ない場所で、何かを栽培しているわけじゃないだろうし。

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    呪術的な何か?
    そうだ、きっとそうに違いない。

    ガボッチョ=宗教、呪術
    という構図が、頭の中に出来上がってきました。

    そして、ガボッチョへ登りにかかります。
    これがすごい急な斜面。

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    しかもアザミなどのトゲをもった植物が密生しているので、なかなか前に進みません。
    全身、擦り傷だらけになります。
    さすが謎の山“ガボッチョ”、一筋縄ではいきません。

    四つんばいで踏ん張りながら、登っていきます。
    手をかけようとしたその先に。
    うおーっ、トリカブトだ!

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    猛毒のトリカブトが花をつけていました。
    花粉が傷口に触れるだけで、かぶれます。

    困難に次ぐ困難。
    この先、いったい何が待ち構えているのか?
    斜面を登りきりました。
    視界が開けます。
    ついに山頂に到着したのです。

    と、目の前に現れたのは、謎のオブジェ。
    これはいったい?

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    これ、絶対に儀式を行うためのヤツでしょ。
    何らかの宗教団体か、秘密結社がからんでいるに違いない。
    とんでもない発見をしてしまったのではないか?
    テンションはマックス状態です。

    これは念入りな調査が必要ですね。
    見渡す限り、人の気配はありません。
    謎の山、“ガボッチョ”の正体とは、はたして。

    突然、スマホが鳴ります。
    もしや、「ふっ、ふっ、ふっ。ついに見つけてしまいましたね」
    と、秘密結社がメッセージを伝えにきたのか?
    勢いよく電話に出ました。

    「あのー、今日予定のバナー広告、まだアップされてないんですけど」

    会社からでした。

    結論。
    行ってもわからなかった。

    【豆知識】“ガボッチョ”とは?

    ガボッチョは株丁が語源になっているそうです。
    丁は偶数のことだから、二つの山頂(頂=丁)を持つ山、と言うことを表しています。
    江戸時代・寛政年間の文献には、すでに「かぶっちょ」という表記があるのだとか。
    そんな昔から名前を持つ、由緒正しい山だったのですね。

    後日、親切な人が教えてくれました。

  • くまにさそわれて山に行く

    2016-11-29
    山記

    山記1回目は、熊に会った話。
    石川、岐阜にまたがる白山に登ったときのこと。

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    行くは、北縦走路。
    白川郷に向かって歩いていく、静かな登山道です。

    季節は9月末、秋真っ只中。
    紅葉も進み、周囲には赤い木の実がなっています。

    かれこれ8時間は歩いたでしょうか。
    まだ誰にも会いません。
    静かな登山もいいものだ、とのんきに構えていると。

    ぬかるみに足跡を発見しました。
    先行してる人がいるのかな。
    と思いつつ、よく見ると。

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    これ、人じゃないよね。
    なんか、爪とかついてるんですけど。

    まだ新しいその足跡は、前足と後足がくっきりと見て取れます。
    やばいなー、いるよ。
    とはいっても、鈴も付けてるし、そうそう出くわすものでもないでしょう。

    気を取り直して、先へ。
    紅葉と景色に見とれていると。
    登山道のど真ん中にコレが。

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    デカイ。
    絶対にいるよ。
    間違いないよ。
    やばいよ。

    この先、道のそこかしこに、巨大な糞が転がっています。
    そしてついに、出会ってしまいました。

    距離にして30メートルくらいでしょうか。
    藪の中から姿を現したのです。

    こちらを、ちらと一瞥すると。
    「あー、人がいるよ、面倒くせえなぁ」
    とばかりに、のっそりと登山道を歩いています。

    出会ったのはこのあたり。

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    えっ、熊の写真はないのかって?

    無理 無理 無理 無理 無理 無理。
    出会った瞬間、全身固まって、写真どころじゃなかったんですって。

    もうね、会えば分かりますから。
    ほんと、なんもできなかった。

    この後、熊さんは藪の中へと戻っていかれました。
    恐る恐る通過します。
    と、強烈な獣臭が立ち込めて。

    あー、これが野生の熊の匂いなのね。
    この匂い、一生忘れないことでしょう。

    で、その30分後。
    登山道の分岐点に差し掛かります。

    右側の道に行こうとしたところ。
    茂みの向こうになにかいる。

    木の実を食べる音がします。
    間違いありません。
    すごい確率。1日に2度も会えるなんて。

    「あのー、そこ通してもらえませんか」
    と呟いてみたものの。
    熊さんが「はい、どうぞ」と応えてくれるわけもなく。

    ためしに、鈴を手にとって鳴らしてみました。
    「ウーッ」とうなり声が返ってきます。
    あ、返事してくれた。でも怒ってる?

    もう一度、鈴を。
    今度は「ガウーッ」。
    威嚇されました。
    どうやら機嫌を損ねてしまった様子。
    お食事を邪魔したのがいけなかったのでしょう。

    ここで三択。
    1.右の道を進んで、熊とケンカする
    2.引き返して、さっきの熊に再会する
    3.左の道へ進む

    そりゃ3.しかないでしょ。
    でもですね、左の道を進むと、もうひと山越えなくちゃいけないのですよ。

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    結局、登りましたよ。
    もうひと山。
    足が悲鳴を上げています。

    ここから下山する道が、これまたとんでもなく長い。
    山から下りたころには、あたりは真っ暗になっていました。

    川上弘美さんの『神様』のように、熊と心を通わせることはできないのでした。