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employee blog社員ブログ

くまにさそわれて山に行く

2016-11-29
山記

山記1回目は、熊に会った話。
石川、岐阜にまたがる白山に登ったときのこと。

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行くは、北縦走路。
白川郷に向かって歩いていく、静かな登山道です。

季節は9月末、秋真っ只中。
紅葉も進み、周囲には赤い木の実がなっています。

かれこれ8時間は歩いたでしょうか。
まだ誰にも会いません。
静かな登山もいいものだ、とのんきに構えていると。

ぬかるみに足跡を発見しました。
先行してる人がいるのかな。
と思いつつ、よく見ると。

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これ、人じゃないよね。
なんか、爪とかついてるんですけど。

まだ新しいその足跡は、前足と後足がくっきりと見て取れます。
やばいなー、いるよ。
とはいっても、鈴も付けてるし、そうそう出くわすものでもないでしょう。

気を取り直して、先へ。
紅葉と景色に見とれていると。
登山道のど真ん中にコレが。

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デカイ。
絶対にいるよ。
間違いないよ。
やばいよ。

この先、道のそこかしこに、巨大な糞が転がっています。
そしてついに、出会ってしまいました。

距離にして30メートルくらいでしょうか。
藪の中から姿を現したのです。

こちらを、ちらと一瞥すると。
「あー、人がいるよ、面倒くせえなぁ」
とばかりに、のっそりと登山道を歩いています。

出会ったのはこのあたり。

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えっ、熊の写真はないのかって?

無理 無理 無理 無理 無理 無理。
出会った瞬間、全身固まって、写真どころじゃなかったんですって。

もうね、会えば分かりますから。
ほんと、なんもできなかった。

この後、熊さんは藪の中へと戻っていかれました。
恐る恐る通過します。
と、強烈な獣臭が立ち込めて。

あー、これが野生の熊の匂いなのね。
この匂い、一生忘れないことでしょう。

で、その30分後。
登山道の分岐点に差し掛かります。

右側の道に行こうとしたところ。
茂みの向こうになにかいる。

木の実を食べる音がします。
間違いありません。
すごい確率。1日に2度も会えるなんて。

「あのー、そこ通してもらえませんか」
と呟いてみたものの。
熊さんが「はい、どうぞ」と応えてくれるわけもなく。

ためしに、鈴を手にとって鳴らしてみました。
「ウーッ」とうなり声が返ってきます。
あ、返事してくれた。でも怒ってる?

もう一度、鈴を。
今度は「ガウーッ」。
威嚇されました。
どうやら機嫌を損ねてしまった様子。
お食事を邪魔したのがいけなかったのでしょう。

ここで三択。
1.右の道を進んで、熊とケンカする
2.引き返して、さっきの熊に再会する
3.左の道へ進む

そりゃ3.しかないでしょ。
でもですね、左の道を進むと、もうひと山越えなくちゃいけないのですよ。

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結局、登りましたよ。
もうひと山。
足が悲鳴を上げています。

ここから下山する道が、これまたとんでもなく長い。
山から下りたころには、あたりは真っ暗になっていました。

川上弘美さんの『神様』のように、熊と心を通わせることはできないのでした。