行けばわかるさ!
ガボッチョ。
その山の名前を見たとき、「行かねばならない」という思いがこみ上げてきたのです。
だいたい、山の名前が“ガボッチョ”っておかしいでしょ。
冗談でつけた名前?
の割にはちゃんと地図に載ってるし。
あ、googleにも登録されてるよ。
ネットで検索しても、登山の履歴はほとんど見つかりません。
登山道すらないので、だれも行かないわけです。
名前の由来は?
どんな意味があるの?
こんなときは行動あるのみ。
そう、行けばわかるさ!
8月某日。
夏休みを取得して行ってきました。
場所は霧が峰のすぐ近く。
登山道が存在しないので、適当にあたりをつけて、藪の中に入っていきます。
最初は下り。
藪の深さは肩ぐらい。
獣道が錯綜しているので、これをたどっていきます。
気がつくと、道が途切れていたり、蛇行していたり。
人がつけた道じゃないので、まあしょうがない。
藪をかきわけ、一歩一歩前進していきます。
と後ろから、何かがすごい勢いで近づいてきました。
巨大な物体。
いったい何が?
藪の中から飛び出してきたのは、立派な角をもった鹿。
真横を、ジャンプしながら駆け抜けていきます。
振り上げた鹿の足が、鼻先をかすめました。
間一髪。
あのサイズだと、追突されたら大怪我します。
もう心臓バクバクです。
すげー、なんか探検っぽくなってきた。
テンションがあがります。
そして前方には、“ガボッチョ”が姿を現します。
いかにも謎の山、という佇まい。
さらに進んだところで、人工物を発見しました。
木で囲ってあるようですが。
こんな人が来ない場所で、何かを栽培しているわけじゃないだろうし。
呪術的な何か?
そうだ、きっとそうに違いない。
ガボッチョ=宗教、呪術
という構図が、頭の中に出来上がってきました。
そして、ガボッチョへ登りにかかります。
これがすごい急な斜面。
しかもアザミなどのトゲをもった植物が密生しているので、なかなか前に進みません。
全身、擦り傷だらけになります。
さすが謎の山“ガボッチョ”、一筋縄ではいきません。
四つんばいで踏ん張りながら、登っていきます。
手をかけようとしたその先に。
うおーっ、トリカブトだ!
猛毒のトリカブトが花をつけていました。
花粉が傷口に触れるだけで、かぶれます。
困難に次ぐ困難。
この先、いったい何が待ち構えているのか?
斜面を登りきりました。
視界が開けます。
ついに山頂に到着したのです。
と、目の前に現れたのは、謎のオブジェ。
これはいったい?
これ、絶対に儀式を行うためのヤツでしょ。
何らかの宗教団体か、秘密結社がからんでいるに違いない。
とんでもない発見をしてしまったのではないか?
テンションはマックス状態です。
これは念入りな調査が必要ですね。
見渡す限り、人の気配はありません。
謎の山、“ガボッチョ”の正体とは、はたして。
突然、スマホが鳴ります。
もしや、「ふっ、ふっ、ふっ。ついに見つけてしまいましたね」
と、秘密結社がメッセージを伝えにきたのか?
勢いよく電話に出ました。
「あのー、今日予定のバナー広告、まだアップされてないんですけど」
会社からでした。
結論。
行ってもわからなかった。
【豆知識】“ガボッチョ”とは?
ガボッチョは株丁が語源になっているそうです。
丁は偶数のことだから、二つの山頂(頂=丁)を持つ山、と言うことを表しています。
江戸時代・寛政年間の文献には、すでに「かぶっちょ」という表記があるのだとか。
そんな昔から名前を持つ、由緒正しい山だったのですね。
後日、親切な人が教えてくれました。