生成AIを使った作品の応募をどう扱う?コンテストの主催者が決めておきたいAIのルール

著者:公募ガイド社 法人ソリューション部
こんにちは。公募ガイド社 法人ソリューション部です。私たちは、企業や自治体のコンテストの企画・運営をお手伝いしています。
画像や文章を作れる生成AIが身近になり、コンテストの事務局にも「AIを使った作品は応募できますか?」という問い合わせが届くようになりました。募集要項に何も書いていないと、応募者は判断できず、事務局も審査の段階で扱いに困ります。
先に結論をお伝えすると、「禁止」「条件付きで可」「申告すれば可」のどれにするかを決めることが大切です。そして、募集要項・応募規約・応募フォームの3か所で同じ内容をそろえます。どれが正解ということはなく、コンテストの目的によって向く型が変わります。
この記事では、コンテスト事務局の目線で、次の点を整理しました。生成AIと著作権についての国の考え方、ルールの3つの型、AI利用の範囲の書き方、応募フォームの申告欄の作り方です。
生成AIをめぐる考え方や制度は、議論が続いています。この記事は2026年9月30日時点で確認した情報をもとにした、一般的な考え方の紹介です。実際の応募規約は、社内の法務担当や専門家に確認して用意してください。
目次
- 結論:決めておきたい5つのこと
- 前提:生成AIと著作権についての国の考え方
- ルールの3つの型と、向いているコンテスト
- 「どこまでがAI利用か」を具体的に書く
- 応募フォームにAI利用の申告欄を設ける
- 疑わしい作品が届いたときの対応
結論:決めておきたい5つのこと
| # | 決めること | 例 |
|---|---|---|
| 1 | AIを使った作品を受け付けるか | 禁止/条件付きで可/申告すれば可 |
| 2 | 「AIを使った」に当たる範囲 | 画像の生成は対象、誤字チェックは対象外、など |
| 3 | 申告の方法 | 応募フォームの申告欄、制作過程の提出 |
| 4 | 審査での扱い | 同じ基準で審査/AI部門を分ける/審査員に申告内容を伝える |
| 5 | ルールに反していた場合 | 審査対象外、受賞の取り消し、賞金・賞品の返還 |
特に2の「範囲」を決めずに「AIの使用は禁止」とだけ書くと、応募者から「画像編集ソフトの自動補正も駄目ですか?」「翻訳ツールは?」といった問い合わせが続きます。
【お問い合わせ例】
・文章の推敲にAIを使うのは問題ないですか?
・動画作品のナレーションにAI音声ソフトを使うのはダメですか?
・アイデア出しの段階でAIと壁打ちした場合は規約違反になりますか?
前提:生成AIと著作権についての国の考え方
文化庁は、「AIと著作権について」のページで関連資料を公開しています(2026年9月30日確認)。中心となるのは、文化審議会著作権分科会法制度小委員会がまとめた「AIと著作権に関する考え方について」(令和6年3月15日)です。コンテストの主催者に関係が深いのは、次の2点です。
1. AIが作ったものは、著作物にならない場合がある
著作権法では、著作物を「思想又は感情を創作的に表現したもの」と定めています(第2条第1項第1号)。文化庁の資料では、AIが自律的に生成したものは著作物に当たらず、人がAIを「道具」として使ったといえる場合に著作物性が認められる、という考え方が示されています。その判断では、人の「創作意図」と「創作的寄与」があるかが問題になるとされています。簡単な指示(プロンプト)だけで生成したものは、著作物に当たりにくいと説明されています(出典:文化庁 令和6年度著作権セミナー「AIと著作権Ⅱ」資料)。
主催者にとっての意味: 規約で「受賞作品の著作権を主催者に譲渡する」と定めていたとします。それでも、AIが生成した部分に著作権がなければ、譲り受ける権利がそもそもない、ということが起こり得ます。ロゴやキャラクターなど、権利を持って長く使いたい作品を募集する場合は、特に注意が必要です。著作権の譲渡については応募作品の著作権は誰のもの?で解説しています。
2. AIで作った作品が、既存の作品の権利を侵害することもある
同じ資料では、AIを使って作ったものが既存の著作物の著作権侵害になるかは、通常の場合と同じく「類似性」と「依拠性」で判断されるという考え方が示されています。たとえば、既存の作品そのものを入力したり、作品名や作者名を指定したりして生成した場合は、依拠性が推認されやすいとされています。
主催者にとっての意味: 受賞作品をポスターや商品に使ったあとで、既存の作品に似ていると指摘されるおそれがあります。「第三者の権利を侵害していないこと」を応募の条件にするのは、AIを使った作品でも同じです。
なお、生成AIと著作権については、2025年度以降も文化審議会で検討が続いています(参考:第25期 法制度に関するワーキングチーム)。募集のたびに、最新の資料を確認しましょう。
ルールの3つの型と、向いているコンテスト
| 型 | 内容 | 向いているコンテスト | 気をつけること |
|---|---|---|---|
| 禁止 | 生成AIで作った作品は応募できない | 子ども向けの作文・絵画、技能や表現力そのものを競うもの、ロゴ・キャラクターなど権利を持って使いたいもの | 「どこまでが禁止か」を具体的に書かないと、補助的な使い方まで迷わせる |
| 条件付きで可 | アイデア出しや校正など、補助的な使い方だけ認める | 一般向けの文章・イラスト・写真のコンテスト | 「補助的」の線引きを例で示す |
| 申告すれば可 | 使い方を申告すれば、生成した作品も応募できる | 企画・アイデア募集、AIの活用そのものを歓迎するもの | 審査で、申告内容をどう評価するかを決めておく |
「禁止」と「申告すれば可」の間で迷う場合は、AI部門を別に設けるという方法もあります。AIを使う人と使わない人を同じ基準で比べなくて済むため、審査員も評価しやすくなります。
「どこまでがAI利用か」を具体的に書く
ルールを伝わりやすくするには、使い方ごとに「対象になる/ならない」を表で示すのがおすすめです。以下は「条件付きで可」にした場合の例です。
| 使い方 | 例 | このコンテストでの扱い(例) |
|---|---|---|
| 作品そのものの生成 | 画像生成AIで絵を作る、文章生成AIで本文を書く | 不可 |
| 下書き・構成の生成 | AIが作った構成案や下絵をもとに仕上げる | 不可 |
| アイデア出し | テーマについてAIに質問し、発想のきっかけにする | 可(申告は不要) |
| 校正・誤字チェック | 文章の誤字や表記ゆれの確認 | 可(申告は不要) |
| 翻訳 | 自分で書いた文章を翻訳する | 【コンテストの趣旨に合わせて決める】 |
| 画像の加工・補正 | 画像編集ソフトのAI機能で、不要物の除去・背景の拡張をする | 【写真コンテストでは特に決めておく】 |
写真コンテストでは、合成や大きな加工をどこまで認めるかという、AIが広まる前からある論点とも重なります。写真の応募フォームの作り方は写真コンテストの応募フォームの作り方、イラストはイラスト・絵画コンテストの応募フォームの作り方で紹介しています。
応募フォームにAI利用の申告欄を設ける
規約に書くだけでは、読み飛ばされることがあります。応募フォームに申告欄を設け、応募のたびに答えてもらうと、ルールが伝わりやすくなり、あとで確認するときの記録にもなります。
申告欄の項目例
| 項目 | 入力方式 | 必須/任意 | 選択肢・注釈の例 |
|---|---|---|---|
| 生成AIの利用 | ラジオボタン | 必須 | 使っていない/補助的に使った/作品の生成に使った |
| 使った場面 | チェックボックス | 任意 | アイデア出し/構成・下書き/画像の生成/画像の加工・補正/文章の校正/翻訳/その他 |
| 使ったツールと使い方 | テキストエリア | 任意 | 注釈:「使った場合は、ツール名と、どの部分にどう使ったかを書いてください」 |
| 申告の確認 | チェックボックス | 必須 | 「生成AIの利用について、事実のとおり申告しました」 |
「禁止」の型でも、「使っていない」を選んでもらう欄を置くと、ルールを読んだうえで応募したことが分かります。
制作過程の提出を求める
イラストや絵画のコンテストでは、ラフ、下絵、レイヤーの分かれた制作データ、制作途中の写真などを、受賞候補になった人にだけ後から提出してもらう方法もあります。全員に求めると応募のハードルが上がるため、応募時は任意、受賞候補には必須とするなど、段階を分けるとよいでしょう。
Kouboプランナーなら
公募ガイド社の「Kouboプランナー」の応募フォームでは、作品情報にラジオボタン、チェックボックス、テキストエリアの項目を追加し、それぞれ必須・任意を選べます。項目ごとに注釈を表示できるので、AI利用の申告欄と、対象になる使い方の説明をフォームの中にまとめられます。応募フォームはライトプランなら無料で作れます。
Kouboプランナーについて詳しく見る(無料)
疑わしい作品が届いたときの対応
「禁止」の型にしていても、AIで作ったように見える作品が届くことはあります。そのときに慌てないよう、対応の流れを先に決めておきましょう。
- 申告内容を確認する:応募フォームの申告欄に何と答えているか
- 判断の材料を集める:受賞候補であれば、制作過程のデータや下絵の提出を依頼する
- 複数人で判断する:事務局と審査員など、1人で決めない
- 記録を残す:依頼した内容、応募者の回答、判断の理由
AIで作られたかどうかを判定するツールもありますが、ツールの結果だけで失格にするのは避け、制作過程の確認など、ほかの材料とあわせて判断するのが安心です。応募者に確認するときは、疑っていると決めつける書き方にならないよう、「審査の過程で、受賞候補の皆さまにお願いしています」のように伝えます。
よくある質問
Q. 「AIの使用は禁止」とだけ書いておけば十分ですか?
A. 補助的な使い方(校正、画像編集ソフトの自動補正など)まで含むのか、応募者には分かりません。使い方ごとの扱いを表や例で示しておくと、問い合わせが減ります。
Q. AIを使った作品を受賞させても問題ありませんか?
A. ルールの範囲内なら、受賞させること自体は主催者の判断です。ただし、AIが生成した部分に著作権が認められない場合があること、既存の作品に似ているおそれがあることを踏まえ、受賞作品の使い方を考えておく必要があります。権利の扱いは専門家に確認してください。
Q. 前回のコンテストはAIについて何も書いていませんでした。今回から追加しても大丈夫ですか?
A. ルールは回ごとに見直してかまいません。変更した点は、募集要項の目立つ場所に「今回から生成AIの利用についてのルールを追加しました」と書いておくと、前回の応募者にも伝わります。
まとめ
- 「禁止」「条件付きで可」「申告すれば可」のどれにするかを決め、募集要項・規約・応募フォームでそろえる
- 「どこまでがAI利用か」を使い方ごとに示し、応募フォームに申告欄を設けて記録を残す
- AIが生成した部分は著作物にならない場合があり、既存作品との類似のおそれもある。文化庁の最新資料を確認し、規約は法務確認を通す
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。コンテストの企画や運営で迷うことがあれば、公募ガイド社にお気軽にご相談ください。
次に読む記事

