二次捜索
[以下、●●(編集部判断により伏字)さんへの聞き取り調査記録より一部抜粋]
「それで、その父から届いた手紙に書いてあった住所に実際に行ってみたんです。山の中だったので途中までは車でしたが、けっこう歩かされましたよ。
行こうと決めたのは単なる好奇心というか、本当にちょっとした思い付きで、もちろんあんなことになるなんて思ってもいませんでした。その日はかなり晴れていたこともあり熱中症寸前でした。もちろん、途中何度か引き返そうとはしたんですが、こっちも意地になっちゃって。4時間くらいでしょうか?歩いて歩いて、ようやくたどり着いたんです。」
これがその時に実際に●●さんが撮ったという写真である。
「すごく晴れていて、かなりお日様も出ていたんですが、なぜかこの写真、もやがかかっちゃっていて……。どうしてなんでしょうね。で、まあその時は特に奇妙なこともありませんでしたし、ようやく日陰で休める、と思って中に入ったんです。中に入れば、まああんな父でも人間ですから、水の一杯くらい飲ませてくれるかな、なんて期待もありました。ですが……」
「まあ、会いたかったというほどでもないんですが、父がいなかったことにがっかりした私は、そのままその山荘を後にし、家に帰りました。幸い日も落ちてきていましたし、帰りは下り坂でしたから、その日は無事家に帰れたんです。ですが、家に帰ると自室のテーブルの上に、見覚えのない財布が置かれていたんです。なんか、その財布を見た途端、父に関する記憶がバっとよみがえってきちゃって。これなんですが……」

そういって●●さんはコートの内ポケットから財布を取り出した。一見何の変哲もない財布だが、●●さんにとっては大切な父からの贈り物のように思えたのだろう。
「ちょっとまだ怖くて中身が見られていないんです、そこで今日はいまから一緒にこれを開けてほしくて……。」
今回の依頼については前もってメールで聞かされていたため驚かなかったが、筆者としても恐怖心はあった。
とはいえ依頼されてはるばる××市にあるファミリーレストランに足を運んだわけだし、好奇心もあった。
近くの公園から聞こえる、子どもたちの遊ぶ声に励まされるように、わたしは財布を開けた。
中には小さな紙切れが入っていた、紙を伸ばすと消えかかった字で
「しあわせに 色があったら 黄色だな」
と書かれていた。●●さんも拍子抜けしたようで、「いったい何のメッセージだったんでしょうね」「遺言とかそういう、大切なことが書かれているかと思ったのですが……」などひとしきり言葉を交わし、その日は解散した。
その日以来、●●さんとは連絡が取れていない。

