頑固なのに寂しがり屋さんね
法人ソリューション部のムネです。
学生のころから、毎年ささやかなテーマを設けて一年間ちまちまと勉強をするという習慣があります。2024年のテーマは「美学・現代美術」。「美しい」と感じる心のはたらきとは何か。現代アートとはいったいどのようなシステムなのか。ちょっとでもそういった不思議の世界に入門できないかと思って、色々と本を読んだり考えたりしてきました。
その中で今年、特に面白かったのが岡崎乾二郎さんの『抽象の力』という批評。
この本が言っていることは、大雑把にいうと、「抽象とは具体的な力である」ということ。抽象絵画とは芸術家の感じていること形象化したものでも、スタイリッシュな意匠のひとつでもなく、「世界の直接的なあらわれ」をそのまま描こうとした試みであるというのです。
ものすごーく簡単に解説してみます(誤読したらすみません)。
「よくわからないこれはいったい何なのか」を考える際には、それを作った人たちが何をベンチマークとしてみていたのかが重要になります。今回の場合だと、何を倒すために抽象絵画を描いているのか、と言うことですね。
この本に登場する20世紀の芸術家たちが意識していたのは、カメラという技術でした。写真機が世界をありのままの姿で写し取ってしまうと思われた時代の中で、一部の芸術家たちは視覚的ではない形で世界のありのままの姿を直接描こうとした、と。
雑に言い換えれば、「俺の世界の見え方」を表明したのが抽象ということになります。というよりも「俺の世界の見え方こそが人間一般の世界の見え方なんだよ!」、と主張している感じでしょうか。
めちゃくちゃ面白くないですか!!!
カメラという技術があるのに、それとは異なった形の「現実」と向き合おうとする孤独。頑固な寂しがり屋の声が聞こえてくるようです。なんだかいとおしくも思えてきます。
まあ特に何かの結論とか意気込みがあるわけではないのですが、めちゃくちゃ面白かったので簡単に感想を書いておきます。もっと勉強を深堀りしたらまた報告します。
今年のブログも今日が最後になります。良いお年を。