光に寄せられる
こんばんは、いづみです。
健康診断に行きました。心電図が心筋梗塞ですねって言われてびっくりでした。
(全く異常はなく、そういう波形が出る人がたまにいるらしいです)
今日は、5月に読んだ歌集3冊から3首ずつ歌をひくことにします。
『千夜曳獏』(せんやえいばく)千種創一
『水中で口笛』工藤玲音
『シンジケート』穂村弘
以上3冊です。シンジケートは以前に読んだことありますが、新装版が素敵だったので新しい気持ちで読めました。
1冊目『千夜曳獏』
中東に住んでおられた千種さんの歌には中東の風景がよく出てきます。私にとっては写真で見るよりも歌で見せられたほうがずっと身近なものとして中東を想像できるので不思議です。
「そうやんなあ解体するときキラキラのやつ、一個くれへんかなあ」
「魂のせいにしていませんか みたらしのやわい光をあなたに渡す」
「岸へ来い。死海は死んだ海なのに千年ぶりに雨が降ってる」
この口調?の変わりようがいいなと思います。1首目はおそらく他の人の言葉をそのまま歌にしています。2首目3首目は最初に語りかけが入り、後半畳みかけるように独自の視点が入ります。みたらしを渡すのではなくて、やわい光を渡す。死んだ海なのに雨が降る=死んだ海には通常雨が降らないという突然の投げかけ。面白い。
2冊目『水中で口笛』
工藤さんは公募ガイド1月号でも取材させていただきました。人柄を少しだけ知っている分、歌も味わい深いです。
「噛めるひかり啜れるひかり飲めるひかり祈りのように盛岡冷麵」
「ハムカツをげんきに頼むハムカツをげんきに頼むわたしを頼む」
「呆けた祖母を呆ける前より好きだった 水からぐわりと豆腐を掬う」
工藤さんの根の明るさや芯の強さが出ているような気がして好きです。盛岡冷麺、短歌甲子園に出たときに盛岡の高校の子たちが部活終わりにみんなで食べると言っていたのを思い出します。宮崎商業高校の子たちが「僕たちは宮崎辛麺だなあ」と言っていたことも。文芸部とご当地麺、謎の関係性です。歌の奥に根付いた土地が見える歌は、優しいのに強くてすごい。
3冊目『シンジケート』
ほむほむの第一歌集、新装版が出ました。綴じ糸がはっとするほどきれいな水色。
「ベーカリーのパンばさみ鳴れ真実の恋はすなわち質より量と」
「女には何をしたっていいんだと気づくコルクのブイ抱きながら」
「朝の陽にまみれてみえなくなりそうなおまえを足で起こす日曜」
パン屋のトングのカチカチでそんなもん主張するな、ブイ抱きながら女には何してもいいとか思うな、ってツッこんじゃうけどほむほむに「おまえ」って言われながら足で起こされたい気もしてくる。なんか、なぜか、すごいかっこいい。穂村さんの『もしもしあなたが運命の人ですか』も一緒に買いましたがそちらもよかったです。
短歌、「詠む」ほうを「読む」よりさきに始めたのでいまだに歌集を読み通すには身構えてしまうところがあります。けどやっぱり読めば読むだけ楽しい。そして3冊並べてみると、圧倒的に「光」モチーフが好きなことがわかります。前世は虫かもしれません。