中山道を行く 第7週
編集部の黒田です。
今回は、「中山道を行く」第7週をおおくりします。
第7週は、松井田宿から坂本宿を経由し、碓氷峠を越えて軽井沢宿まで行った。
この日も始発に乗り、東京、埼玉を飛び越し、9時前に信越線松井田駅に降り立つ。
のちにこの街道歩きは登山になるが、この段階では散歩の延長という感じ。山用の服装でもなく、靴も普通のウォーキングシューズ。史跡があれば寄ったりもし、この日は有名な横川の釜めしを食うため、横川駅前の本店に寄る(釜めし自体は駅売りのものと全く同じだった)。
松井田駅を出て、歩くこと2時間。軽井沢に着いたらジョン・レノンが愛した食パンでも食うかと思いつつ、旧国道18号線を歩いていると、「旧中山道入口」と書かれた看板があった。看板は誰かがいたずらしたのか、その先の森の入り口を指している。
「あれじゃあ、間違って森の小径に迷い込んでしまう人がいるよ」と思いながら通過し、国道沿いを歩く。
しかし、「いや待て、あの標識が正しいのかも」と戻ってみると、果たしてそこが旧中山道の入り口だった。某アナウンサーの読み間違いではないが、文字どおり「一日中山道」。
一瞬、迷う。そのとき、すでに11時。あんな山道、一人で行って大丈夫か。散歩をするような軽装だし、それに軽井沢まで7kmだと思っていたが、道路標識には「17km」とある。
1時間に3km進むとして、17kmなら約6時間。軽井沢到着は午後5時。
ちょっと無謀かと思ったが、引き返すのも面倒になり、幅1メートルもない獣道を行く。
するととんでもない急坂が待ち受けていた。あとで知ったのだが、「馬落とし」という急坂だったらしい。
こんな坂が17kmも続くのかよ、やっぱり帰ろうか。地べたに座り込んでしばし沈思黙考。
山の中で一人でいると不安になる。
今、急病になったら? ケガをしたら? 熊に会ったら? 迷子になったら?
途中で日が暮れたらアウトという言葉が蘇る。
本当に生きて帰れるのか。「勇気ある撤退を」と書かれた翌日の新聞記事が目に浮かぶ。
しかし、同時に思った。峠とはいえ、昔はお姫さまも通った道。こんな急坂がいつまでも続くはずがないと。
すると、ほどなく道は平坦になり、2時間ほど歩くといきなり舗装道路に出た。
7kmというのは山道だけを指していたらしい。さっきまで山中にいたのに、この先は旧軽井沢銀座。
万平ホテルの脇を抜け、ジョン・レノンの食パンを買い、帰還兵のような気分になる。
九死に一生を得て帰ってきました!なんて。
死ぬかと思ったが、これがけっこう病みつきになった。