中山道を行く 第5週
編集部の黒田です。
今回は、「中山道を行く」第5週をおおくりします。
第5週は、始発で家を出て、午前中にJR本庄駅着、本庄宿を出て、倉賀野宿経由で高崎宿に至った。
本庄市を出るとほどなく高崎市に入る。高崎と言えば群馬県一の大都市だが、このあたりはまだ山村というロケーション。
そこに突然、おしゃれな洋菓子の工場が出現する。有名な「ガトーフェスタハラダ」の本社工場だ。
工場から香る甘い匂いに記憶が刺激されたのか、洋菓子店と言えば、遠い昔、同じ洋菓子店でバイトしていた横室くんのことを思い出す。
卵かけご飯をするとき、母親は卵を落としたあと、必ず「煮えちゃえ~」と言った。
なんでそんなことを言うのか不思議で、子どもの頃に聞いたことがあったが、「生だとお腹が痛くなる」とかそんなことを言っていた記憶がある。だったら焼けばいいじゃないかという話だが、それでは卵かけご飯にならない。
だから茶碗の中で少しだけ煮るということのようだ。
横室くんとは同じ大学、同じバイト先、同じサークルだったので何度が一緒に旅行に行ったのだが、あるとき、民宿での朝食に生卵が出て、卵かけご飯にしたのだが、そのとき、彼が小さな声で例の呪文を言ったのだった。「煮えちゃえ~」と。
「え? 今の何?」私は聞いたが、彼は「言わないのー?」としか答えなかった。
そのとき、瞬間的に悟った。「煮えちゃえ~」は我が家だけの呪文ではなく、北関東周辺の風習なのではないかと。
確信はない。ただ、家族以外にもそう言う人がいるということはそういうことではないのか。
誰かご存じの方がいたら私に電話してほしい。いや、「スタイリー」(誰も知らん)ではないから電話は困るが、ぜひ公募ガイド社までご一報を。
ちなみに横室くんと一緒にバイトしていたのは「六本木クローバー」という洋菓子店の川崎店だった。
群馬の名店「ガトーフェスタハラダ」ほどじゃないけど、コアントローというラズベリーのミルフィーユが人気だった。
六本木本店にはよく仕事帰りに寄っていたが、何年か前に行ったら店がなかった(閉店したようだった)。我が青春が……。無念。
午後三時、高崎宿に着き、名物のだるま弁当を食べる。
「カッパピア(遊園地)ってまだあるのかな」と検索したらとうの昔に廃園になっていた。少年時代の思い出が……諸行無常。