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読者の小説 結果と講評

読者の小説 結果と講評
 本誌6月号で募集した「読者の小説」の結果を発表し、合わせて講評を掲載します。
 「10題噺」は、キーワードが10あったら、そこからどんな話を想像するか、無作為に並んだ
星から星座を思い描くような創作法に挑戦してもらいました。
応募数は85編でした。
 「実際にあった事件をもとにした小説」は、事実を話のタネとし、そこから想像を膨らませて
もらおうという意図でした。
 応募数は22編でした。
 なお、最優秀賞各部門1編は、本ブログにて作品を発表します。
●10題噺部門
 最優秀賞「つくしの家」三浦幸子
 選外佳作「後悔+懺悔=未来」樹 永久子
 選外佳作「希望の星」小泉由貴
〈選評〉
 「つくしの家」は、原稿用紙5枚の中に10のキーワードをちりばめるため、その解決策と
して大阪弁を取り入れたのがポイント。地の文では扱いにくい言葉を冗談混じりの会話の
中に入れ、なじませることに成功しました。子供たちが楽しみに通う施設の様子が生き生
きと描写され、10題噺ということを忘れてしまうほど自然な流れでまとまっています。
 「後悔+懺悔=未来」は、冷徹な数学者が主人公。新婚の妻の顔すらまともに見ていな
かった変わり者の男が、妻が倒れたことにショックを受け、走るという慣れない行為を通じ
て人間性に目覚める。きっちりと構成した物語の中にキーワードが無理なくはめ込まれて
います。
  「希望の星」は、家庭での居場所がなく投げやりになっている少女と週末占い師の女性
が、夏の路地裏で心を通わす情景に引き込まれます。キーワードの使い方にやや不自然
な点がありますが、高く評価したい作品です。
●実際にあった事件をもとにした小説部門
 最優秀賞「天才」志水孝敏
 選外佳作「青い目の人形」島崎桂
〈選評〉
 大半の作品が実際にあった事件をなぞるだけで終わっているなか、「天才」は、「警察署
に強盗に入る」というまぬけな男の事件の舞台裏を膨らませ、なるほど!と思わせます。
話としても愉快で、文章、結構も見事です。
 「青い目の人形」は、一見、ごく普通の話のようでもありますが、なるほど、だからなの
かと思わせる結末は鮮やかでした。