日本のコンテスト傾向分析:応募締切と賞金額
日本のコンテストは、大小含め年間約2万件も開催されています。これらのコンテストは、芸術、文学、ビジネス、テクノロジーなど、多岐にわたる分野で才能ある個人や団体を発掘し、革新的なアイデアを生み出す重要な役割を果たしています。本記事では、この膨大な数のコンテストにおける二つの重要な要素、「応募締切月の傾向」と「賞金額の実態」について、詳細な分析を提供します。
応募締切月の分布傾向
日本のコンテストにおける応募締切月には、興味深い傾向が見られます。最も顕著な特徴は、締切のピークが1月と9月に集中していることです。これは、日本の社会や教育システムの特性と密接に関連しています。
一方で、4月と12月は締切が最も少ない月となっています。4月は日本の新学期や新年度の開始時期であり、多くの人々が新たな環境に適応する忙しい時期です。12月は年末の繁忙期であり、多くの企業や個人が年末の業務や行事に追われる時期であることが影響していると考えられます。
特筆すべきは、8月から10月の3ヶ月間で全体の約45%の締切が集中していることです。この期間は、夏休みが終わり、多くの人々が通常の生活リズムに戻る時期と一致しています。
影響要因の詳細分析
この締切月の分布傾向には、主に二つの要因が影響していると考えられます。
一つ目は長期休暇の影響です。日本の企業における平均夏季休暇付与日数は2018年の調査によると4.4日となっています。この期間は一般的な社会人にとって特に長期とは言えませんが、学生にとっては長期の夏休みとなります。
実際、学生向けコンテストの40%が9月に集中していることが弊社独自のデータから明らかになっています。これは、学生が夏休み中に作品を制作し、新学期が始まる前にコンテストに応募するというパターンを反映していると考えられます。9月のコンテスト全体の約20%が学生向けであることからも、この傾向が顕著であることがわかります。
二つ目の要因は、主催者の年度計画です。多くの日本企業や自治体では、3月または12月が年度末となっています。コンテストの主催者は、この年度末に合わせてスケジュールを組む傾向があります。
通常、コンテストの締切から受賞発表までは2~3ヶ月程度の期間が設けられます。このため、12月に結果発表を予定しているコンテストは9月から10月に締切が集中し、3月発表予定のコンテストは1月から2月に締切が集中する傾向が見られます。この傾向は、主催者の年度計画が締切月の分布に大きな影響を与えていると考えられます。
賞金額の実態
コンテストにおけるもう一つの重要な要素が、賞金額です。2018年に行われた公募の1位賞金額総合計は約11億5000万円にも上り、その重要性が伺えます。しかし、賞金額の分布を詳しく見ていくと、興味深い実態が浮かび上がってきます。
副賞の種類と分布
まず、副賞は大きく二つに分類されます。一つは現金または金券類を進呈するパターン、もう一つは特産品やグッズ、賞状、盾などを授与するパターンです。分析の結果、現金・金券類が全体の約48%(4,526件)、物品などが約52%とほぼ同数であることがわかりました。
賞金額の詳細分析
現金・金券類の賞金額を詳しく見ていくと、10万円以下の賞金を設定しているコンテストが3,421件あり、全体の75%以上を占めています。この中でも、1万円以下の賞金が31%を占めており、少額賞金のコンテストが多数を占めていることがわかります。
興味深いのは、10万円という賞金額が最も多く採用されており、全体の約8%(741件)を占めていることです。この10万円という金額は、主催者にとって設定しやすく、参加者にとっても魅力的な金額であると考えられます。
中間層の賞金額である10.1万円から100万円の範囲には999件のコンテストがあり、これはほぼ4つの層(25万円刻み)に均等に分布しています。この層は全体の約22%を占めており、主催者の予算や目的に応じて幅広い賞金設定が行われていることがわかります。
一方で、100万円を超える高額賞金のコンテストは106件と、全体の約1%にとどまっています。これらの高額賞金コンテストは、業界や社会に大きなインパクトを与えることを目的としている場合が多いようです。
統計データから見る賞金額の実態
賞金額の平均値は25万2,037円、最頻値は10万円、中央値は6万7,995円という結果が得られました。平均値と中央値が大きく乖離している点から、一部の高額賞金が平均を押し上げており、大多数のコンテストではそれほど高額な賞金を設定していないことがわかります。
高額賞金コンテストの特徴
500万円以上の賞金が授与される公募に目を向けると、1億円が1件、5000万円が1件、3100万円が1件、1000万円が6件、500万円が8件となっています。しかし、これらの高額賞金コンテストの多くは、純粋な賞金というよりも、資金提供や制作費支援の側面が強くなっています。
例えば、「スタートアップワールドカップ」の1億円は「優勝投資賞金」、「TSUTAYA CREATORS AWARDS」の5,000万円は「制作費をバックアップ」、「未完成映画予告編大賞」の3,100万円は「賞金100万円と制作費3000万円相当での映画制作」となっています。
このような傾向を考慮すると、純粋な賞金という観点では、「このミステリーがすごい!大賞」の1,200万円が、2018年時点で開催されていたコンテストの中では最も高額であると言えるでしょう。
まとめ
日本のコンテスト業界における応募締切月の傾向と賞金額の実態についてまとめると、以下のようになります。
応募締切月:
9月と1月にピークがあり、これは学生の長期休暇や企業の年度計画と密接に関連していることが明らかになりました。特に、8月から10月の3ヶ月間に全体の約45%の締切が集中している点は、コンテストを運営したり、応募者を確保する上で重要な指標となります。
賞金額:
大多数のコンテストが10万円以下の賞金を設定しており、10万円が最も一般的な賞金額であることがわかりました。高額賞金のコンテストは稀であり、多くの場合、純粋な賞金というよりも資金提供や制作支援の性質を持っています。
以上の結果のほか、弊社では独自のコンテストデータベースを保有しているため、具体的な数値から出品料や開催コストなど、多くのご相談を承ることが可能となっております。コンテストの開催を予定されている方は是非一度弊社までお問い合わせください。