言葉処 其の8「せっかく亡くなる」
2007-10-23
特にホークスファンではないのだが、2004年、2005年とリーグ1位ながら日本シリーズに出られなかった王監督を見ていると、つい応援したくなってしまう。しかし、2006年も2007年もプレーオフに泣いた。プレーオフは今年クライマックスシリーズと改称されたが、ホークスにとってはまさにここがクライマックス。その後は静かなるエンディングになってしまった。
1999年4月30日、このホークス(当時は福岡ダイエーホークス)の創成期に監督を務め、のちに球団フロントとして辣腕を振るった根本陸夫氏が亡くなった。話はそれから少し経った夜、テレビでスポーツニュースを見ていたときのこと、耳を疑うようなコメントが流れてきた。その日、ホークスはなんだか情けない負け方をしたらしく、西武~巨人OBの解説者はこう言って嘆いた。「せっかく根本さんが亡くなってチームに勢いが出てきたというのに」
言うまでもなく「せっかく(勢いが)出てきたというのに」と言ったのだが、「せっかく」という副詞が「亡くなって」を飛ばして「出てきた」にかかるなんて、全文を聞き終えるまでは分からないから、一瞬、「せっかく亡くなって」と聞こえた。
日本語に審判がいたら、「ボーク」(反則投球)と言ってやり直しを命じたかもしれないが、生放送だったから球は全国に発信されてしまった。会話には消しゴムもディレートキーもないから、そこは珍プレーの宝庫、いや真剣勝負の場!(黒)



