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社員ブログ

伊藤一彦の短歌

2022-01-20

『牧水・短歌甲子園作品集』というものが昨年刊行され、
そのなかに、私の歌も1首入れていただいておりました。
ぜひ広めてほしいとのことだったのでここに載せておきます。
IMG_8427
伊藤一彦先生のコメント付きで、なかなかうれしいです。

なんとなく短歌を始めた私を沼に沈めたのが伊藤先生。
めちゃくちゃ温厚な人なのに、詠む歌はずっしりと重さがあり、
大人だ~かっけえ~~とすぐ好きになりました。

いくつか紹介すると、
「おとうとよ忘るるなかれ天架ける鳥たちおもき内臓もつを」
  着眼点とそれを弟への語りかけとするうまさ

「妻とゐて妻恋ふるこころをぐらしや雨しぶき降るみなづきの夜」
  をぐらし=ほの暗いですが、全体としてもほの暗さが出ていて好き

「月光の訛りて降るとわれいへど誰も誰も信じてくれぬ」
  故郷宮崎の月の光を詠んだもの。わかります!と言いたくなる。

「人工の鳥のこゑする地下街を人らいそげり聴くことなしに」
  恐らくは東京の地下街を詠んだもの。人口の鳥の声がやたらと耳につく。

この鋭さ、しびれますよね~。
特に2首目の「妻とゐて~」はうっすらと濡れているような質感や、
大人っぽい情景が、当時17歳くらいだった私と友人たちを沸き立たせ、
「やばい無理しんどい」ばかり言っていました。

また、地方vs東京の構図は斎藤茂吉や石川啄木の時代から
寺山修司なども通りつつ、ずっと続いているものですが、
伊藤先生の歌もそういった側面があります。かっこいい。

短歌だけじゃなくて、いろいろな表現物の中で、
これぐらい人を引きつけられたらなあと思います。