TK-プレス 其の49「小説のキャラクター」
エンターテインメント小説をおもしろくする要素にキャラクターがある。と、あるおじいさんに言ったら、「でしょうね、やはり戦車でしょうね」と言うので、なんか変だなと思っていたらキャタピラーと勘違いしていたという笑い話があるが、キャラクターとは個性的な性格、またはそうした人物を指す。“キャラ”とも言うが、報酬のことでも韓国のアイドルグループでもない。もちろん、キャラメルの略でもない……あ、つまらないこと書いてしまった。あとで消そうっと。
キャラクターと言うと、マンガ的な小説を連想してしまうかもしれないが、よくよく考えると、小説の主人公は誰かが作った人物だからすべてキャラと言える。いや歴史上の人物はそうではないだろうと言われそうだが、むしろ時代小説、歴史小説の人物こそ空想の産物だろう。歴史的背景があるから本当にそのような人物だったような気にさせられるが、性格なんて誰にも分からないから創作するしかないし、吉川英治が描いた宮本武蔵のように大胆に脚色された人物もいる。
ある友人は鎌倉幕府三代将軍の実朝を「ミアサ」と読んで「女子か!」とつっこまれていたが、小説であれば頼朝の娘だったと設定してもいい。“ありえない”と言われても、「だったら証拠写真を持ってこーい」と言えば済む。星座には「あれのどこが『こぐま』なの?」と思うようなものもあるが、ああいう力技もできるのだ。実際、くだんの友人は言った。「実朝は女だったかもしれないだろ、通称ミーサかもしれないだろ、帰国子女かもしれないだろ(それはないな)」
そのうち実朝女説がエスカレートし、わがままなお嬢様ということになった。「金塊和歌集を作る? 執権ちゃん、代わりにやって。何よ、黙っちゃって。無視? はいはい、自分でやりますぅ」なんて言ったりして? と誰かが言う。「『箱根路を我が越え来れば伊豆の海や』って、ちょっと字余りぃ。めんどいぃ。鷹狩の時間なのにぃ(振りまで付けるなよ)。あれ、沖のほうに小島君がいる! 『沖の小島に波の寄る見ゆ』っと」こうして一首できたと。そんなわけあるか!(黒)
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