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社員ブログ

TK-プレス 其の42「男か女か」

2011-03-01

かなりいい大人になってからだったと思うが、友人と話していて壷井栄の話になり、何気なく「壷井栄って女なの?」と聞いたら、「男なわけないだろ、バカじゃん、栄だよ」と大笑いされたのだった。いやいやいや、ちょっと待ってくれ。「栄だから女ってことないだろ。大杉栄は男じゃねえか」と反論したが、「そういう問題じゃねえ」と言って彼は一方的に議論を打ち切ったのだった。


そんなことがあったにも関わらず、その後も作者の性別を気にしたことはなかった。女性か男性かは意外と重要なことのような気がするが、気にしなくてもだいたいは名前で判断できるし、写真があればそれでも分かる。また、「北村薫は実は男」とか「桜庭一樹は男のような筆名にしている」ということが話題になってくれると、それが自然と耳に入ってきて勘違いすることもない。


それにしても最近は「どっち?」と迷うことが多い気がする。ある方は、「三浦朱門」の影響なのか、「三浦しをん」を男だと思っていたそうだが、かく言う私も以前は「長嶋有」を女だと思っていて、作品を読んで「男っぽいところがある」なんて思っていた。当たり前だな。でも、それは審査員も同じだったらしく、新人賞を受賞した際、ある作家に「君、男だったの?」と言われたそうだ。


荻原浩は「おぎわら・ひろし」だが、今ほど有名ではなかった頃、有川浩という作家もいると聞き、それが「ありかわ・ひろ」という女流の作家と知らされたのだが、それから数年、著作を読むことも人物を知ることもなく過ごすうちに、「『おぎわら・ひろ』で女で、『ありかわ・ひろし』で男だったかな」と混同してしまうことがあった。小野妹子と小野小町みたいなものかな。


桑田真澄や渡辺喜美、渡邉美樹を女だと思う人はいないと思うが、活字でしか見ない人の場合は勘違いすることもある。恥を忍んで言えば、恩田陸はずっと男だと思っていた。逆に乾くるみは女だと思っていた。だって「りく」だよ、「くるみ」だよ、そう思うだろ。で、羹に懲りて膾を吹くじゃないけど、そうなるとみんな疑わしくなってくる。泉鏡花……意外と女だったりして。(黒)