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社員ブログ

TK-プレス 其の38「ゴッホ展にて」

2011-01-04

子どもの頃、なぜか惹かれる絵があった。それは実家の洋間に飾られていたが、見た瞬間に「ああ感動」という瞬発力があるわけではなく、毎日見ていても飽きない、しばらくたって見るとやっぱりいい。しばらく見ないと、もう一度見たい。そう思わせる不思議な絵だった。遅効性の麻薬って感じ。無名の画家が描いたものだろうが、なんともいい雰囲気の絵だと思っていた。


絵に関しては、この程度の見識しかないが、ひょんなことから「ゴッホ展」に行くことになった。そこで「なるほど」と同時に「本当?」と思う記述を見た。そこには確か「ゴッホは最初の10年は敢えて素描(デッサン)だけに専念した」とあった記憶がある。調べてみるとゴッホは27歳で画家を志し、37歳で亡くなっているので、この「最初」というのはもっと前の話なのかもしれないが、それはともかく、一足飛びに実作には向かわず、地道に習作を続けた。


デッサンは小説で言えば話の骨格、配分、設計といったことになるが、小説家になろうと思い立ち、そのために向こう10年、10枚、20枚の習作を1000編書こうなんて思う人がいるだろうか。凡人は10編も書いたらすぐに欲を出して実作に取りかかり、狂ったデッサンを技巧でカバーしようとして行き詰ったりするが、ゴッホの場合は生涯に素描を1100点描いた。遅い年齢で画家を志したら、早く結果を出そうと焦るあまり、習作なんてかったるい、なんて思ってしまいそうだが。


ちなみについ最近まで知らなかったのだが、実家の洋間あった絵を引き取ったら、それを見て息子が言った。ゴッホの「アルルの跳ね橋」だと。そうだったの? そんなに有名? どうりで。(黒)