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社員ブログ

TK-プレス 其の37「ペーパーバックライター」

2010-12-21

書籍は製本の仕方により上製本と並製本に分けられ、「高くても読んでおかないとねえ、君」というような立派な本は上製本が多く、「だんなさん、安くしとくから買ってよ」的スタンスの娯楽本、もしくは実用書は並製本であることが多い。前者はハードカバー、後者はソフトカバーと言ったりもするが、最近のコンビニでは並製本同様、表紙がぺらぺらの紙でできていて、さらにカバーも付いてない雑誌感覚の書籍が売られている。これをペーパーバックと言えば格好良すぎるか。


ビートルズの「ペーパーバックライター」には、「If you really like it you can have the rights/It could make a million for you overnight/If you must return it you can send it here」とある。訳すと「気にいったら貴社に著作権をあげましょう/一晩で100万(ポンド?)稼げますよ/差し戻すならここに送ってくださいね」って感じ? つまり売り込みの手紙だ。ちなみに昔の対訳ではPaperback Writerを三文作家と訳していたが、それは当たらずとも近からずってやつかな。


海外ではこのような営業の手紙を各社に送り、著作権を譲渡する会社を作者が選ぶらしいが、日本の場合は新人賞を経てデビューするケースが多く、二重投稿は禁止になっている。確かにそうされては困る。公募ガイド社に新人賞はないが、複数の賞を同時受賞した人に「他社の賞は受けるが、おたくのは辞退する」なんて言われたら、「どうせちっぽけな賞だよ、ふん」と拗ねて非行にも走ってしまうかもしれない。「海のばかやろう」と言って小石を蹴ってしまうかもしれない。


しかし、よくよく考えると新人賞は便利な制度だ。なければ、原稿が書けた、投函して飲みに行こうなんてわけにはいかない。その前に出版社にアポを取って原稿を持参し、そのうえ「M上H樹も裸足で逃げ出すぐらいの出来です」なんて大ぼらもふかなきゃいけない。結果、編集者の机の足置きにしかならないのでは泣くに泣けない。対して新人賞は黙っていても審査してくれ、しかも社会的に信用できる選考委員までいる。売り込みが下手な人には合っているのかもしれない。(黒)