TK-プレス 其の24「感想の受け止め方」
同人誌に参加すると合評会をすることがあるそうだが、藤本義一氏はこれについて「才能をつぶすもの」と警鐘を鳴らしている。素人たちに好き勝手に感想を言われて方向性を見失ったり、変に凝り固まった理屈に萎縮してしまったりするからだそうだ。プロになれば嫌でも批判にさらされるわけだから、今から酷評に慣れておいたほうがいいという意見もあるが、初心者にはまだそこまでの覚悟はないのが普通だろう。
同人誌に参加したことはないが、学校の授業などでは合評形式をとることもあり、その経験から言うと、合評会は無意味だった。素人だからとんちんかんな感想も多いし、作品の本質とは関係ないどうでもいい薀蓄を述べられたりもする。批評されたほうも「一生懸命書いたのにひどい」と感情的になったり、「時間がなくて」などと弁解を始めたりする人もいる。どんな事情があろうと、書かれたものがすべてであって、不特定多数の読み手に一人ひとり弁明して歩くわけにはいかないのだから、その場だけ取り繕ってみても仕方ない。
そんなわけで合評会以前に素人に感想を求めること自体、否定的だったのだが、ある作家の方から、書きあがったら奥さんに読んでもらうと聞いて驚いたことがあった。奥さんは素人である。当然、的外れな感想も言う。「ここよく分からないわね」とか。しかし、先生は「これだから素人は。そこは伏線だからはっきり分かったら台なしなの」などとは内心では思っても言わず、次も快く読んでもらえるよう「鋭いねえ」などと言いつつ、「なぜそう思われてしまったのだろう。ちょっとさりげなさすぎたか」ということを真剣に考える。もちろん、鵜呑みにするのではなく、結果的には変えないこともあるが、それでも納得いくまで再考するのだそうだ。
「素人の感想になぜそこまで?」と問うと、先生は言った。「だって読むのは素人だから」なるほど、これは深い。(黒)
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