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社員ブログ

小説抄 其の22「坂東眞砂子『夢の封印』」

2010-06-01

まだセクハラという言葉が出始めの頃、同僚の女性がこぼした。ある外部スタッフの男性は「(打ち合わせを)一発やろう」が口癖で、それがたまらなく嫌なのだと。そこでうっかり「自意識過剰じゃん? 減るものでもなし」と言ったところ、猛烈に説教されたのだった。


それから少しして編集プロダクションの方々と飲みに行った。そこにいたデザイナーさんは男性が好きな男性で、それは個人の嗜好だからいいのだが、ふざけたふりをしてたびたび抱きついてきたりするので困ってしまった。しかも、目がマジだったから、ランボーでもヴェルレーヌでもない私には拷問に近く、このとき初めて「自意識過剰じゃん? 減るものでもなし」と言ったのは大失言だったと気づいた。減りはしないが、このうえなく迷惑!


さて、坂東眞砂子だが(ここで『女性の品格』の? と思った方、それは坂東眞理子ですよ)、デビュー当時は児童書の新鋭だった。ところが、気づくと官能小説を書いていた。そのとき、単に売らんがために転向したと思うと同時に、スポーツ新聞に連載されているようなエロ小説を連想してしまい、手にとる気にもなれなかった。


しかし、読んでみると、これがまたよかった。書かれているのは普通の濡れ場なのに、なんか違う。何が違うのかと思ったら(あたりまえだが)女性の側から書かれているのだった。男性が書く官能小説はだいたいが陳腐な描写とご都合主義的なストーリー満載だが、同じようなことを女性が書いてもわざとらしくなく、というより妙にリアルで自然なのには驚いた。板東さん自身の力量もさることながら、あれは男性には真似のできない芸当のような気がした。


余談ながら、件の同僚女性にゲイのデザイナーさん事件を話したところ、「それくらいいいじゃない」と言うので、ならば女性の同性愛者がまとわりついてきたら? と問うと、「それは気持ち悪いからいや」だと。そうか、レズビアンって気持ち悪いのか。これは初耳だった。(黒)