Logo
employee blog

社員ブログ

小説抄 其の18「石田衣良『4TEEN』」

2010-04-06

最近は「朝の読書運動」とかいう時間があるそうで、当時中1だった息子が私の本棚を見て、「なんか読む本、ない?」と訊いてきた。中学生が何を好むかは見当もつかなかったが、適当にみつくろって差し出す。武者小路実篤『友情』、伊藤左千夫『野菊の墓』、ツルゲーネフ『初恋』、宮澤賢治『銀河鉄道の夜』。興味を持つに違いないと自信たっぷりだったのだが、あにはからんや微妙な顔。おまけに親を全面否定するかのようなひとこと。「なんか古いんだけど」


結局、親は頼りにならんと思ったのか、息子は一人で勝手に本棚を物色し、いったんは陳舜臣の『三国志』と司馬遼太郎の『国盗り物語』を手にとったが、それはテレビゲームの「三国無双」と「戦国無双」の影響に過ぎなかったようで、「挿絵とかないんだ」と文句を言う。小中学生向けのジュニア新書じゃねえっつーの。


しかし、考えてみると、私も中1の頃は小説にはさして興味はなく、読んだ小説と言えば秋元文庫か、せいぜい星新一ぐらいだった。当然、大人が薦める課題図書などは「くそおもしろくもねえ。『愛と誠』(劇画)のほうがいい」と思っていたし、戸川幸夫の「王者シリーズ」を読んだときは、小学生向けの「ルパン」や「ホームズ」と違い、挿絵がないと気が休まるときがないなあなんて思ったものだった。中学生が読んでおもしろい本ではなく、読むべき本という発想で選んだら、そりゃあ課題図書然とするわな。


さて、数日後、本棚を整理していたら妙な隙間ができていた。見ると石田衣良の『4TEEN』がなかった。主人公は中学生だし、収録された全作品が感動できるのでナイスなチョイスだとは思ったが、冒頭の短編は病気の友だちのために渋谷で女を買う話、別の短編には出会い系サイトも出てくる。学校でそんなの読んでいいのかなと思ったが……ああ、また大人の発想が出てしまった。自分だって、教室で秋元文庫の『恋は緑の風の中』を借りて読んだくせにね。それにしても、あれは相当にエロかったなあ。(黒)