TK-プレス 其の10「文の順列」
《彼女とデートした。》/《パフェを食べた。》/《うまかった。》という三つの文章を重ねて段落を作ろうとしたとき、その並び順は3の順列(3×2×1)で6通りある。
しかし、《パフェを食べた。うまかった。彼女とデートした。》では「彼女とデートした」という大状況が後回しになるので話の前提が分かりにくく、《彼女とデートした。うまかった。パフェを食べた。》では一瞬何がうまかったのか分からない。さらに、《パフェを食べた。彼女とデートした。うまかった。》などと書いてしまうと、何やら彼女がうまかったかのようでもあるから、自ずとこの順番は選ばれない(選ばないよね?)。
ただ、だとしても、《パフェを食べた。》という文章が《食べた、パフェを。》と倒置法にすることはできても《パフェ食べたを。》や《をパフェ食べた。》とすることは許されないように、複数の文章の並び順の場合も、あれはいいが、これはだめという厳格にして絶対的な法則があれば楽なのにと思う。
実は大昔、この文と文の並び順の規則(文間文法)を明らかにしようとした学者がいたそうだ。彼らは《パフェを食べた。うまかった。》はいいが、《パフェを食べた。》のあとに、この文章とはまるで関係ない《国道は大渋滞だ。》や《明日は給料日だ。》といった文章はもってこられないと考えた。確かにこれでは脈絡がない。
しかし、《パフェを食べた。国道は大渋滞だ。ここはドライブスルーの有名パフェ専門店だ。》とか、《パフェを食べた。明日は給料日だ。今度はさらに豪華なやつを注文しよう。》と言えば文脈ができてしまう。要するに、あまりにも例外が多すぎて体系化できなかったのだ。
ちなみに、ここには12のセンテンスがあり、その順列は4億7900万通りを超える。その中の唯一とも言える並び順を簡単に見出すわけだから、人間の脳ってすごいよね。(黒)
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