言葉処 其の95「上下の基点はどこ?」
2009-06-23
靴下って、靴の中にあるのに、なぜ「靴下」と言うのかと思った。「靴中」じゃないかと。「下」には、「下準備」「下書き」など「事前に」という意味や、「下士官」「下請け」など序列や順番が低いという意味もあるが、「靴下」や「下着」の「下」はやはり物理的な上下という意味だろう。ただし、この「上下」は垂直方向ではなく、体に近いほうが下。つまり、意味は中と同じだ。
日本語で「面前」と言えば衆人環視の状態だが、麻雀では「牌の面を自分に向けている」状態を言う。また、日本では「白線の内側に」と言うが、中国では「白線の外側に」と表現するそうだ。かくの如く上下や前後は基準によって変わり、関東では「上り線」は東京に向かう路線を言う。ただし、神奈川県川崎市と東京都立川市を結ぶ南武線は東京に向かうほうを「下り」と言う。
「下屋敷」というのは城から離れているほうの屋敷で、「下町」は地形的に下がっている町(東京の下町は「城下町」の略という説も)。また、律令時代の東山道は今の滋賀から長野経由で関東に入るので、先に着く群馬が「上野」、それから東に下った栃木が「下野」。今の千葉には湿原地帯だった江戸を避けて海路で行き、着いた順に南から「上総」「下総」と呼ばれるようになった。
越前(福井)・越中(富山)・越後(新潟)も都(この場合は奈良)に近い順。越後はさらに上越・中越・下越に分かれており、上越地方には上越市が誕生、上越駅も建設中だ。しかし、この上越駅は北陸新幹線である。上越新幹線の上越は上州と越後の頭文字であり、「都に近い越後」という意味ではないから、中越に上越国際スキー場があるというややこしいことになっている。(黒)



