言葉処 其の88「日本語と外国語の“アナ”ロジー」
2009-05-05
日本語として読むとおかしな印象になる外国語がある。「ホモ牛乳」は「ホモジナイズド」(均質化)の略だそうだが、学生の頃は、よりによってなぜ「ホモ」なのかと不思議だった。風邪薬の「ベンザ」は抗ヒスタミン剤「ピリベンザミン」の略だそうだが、「ベンザエース」なんて言われると超豪華な便座を思い浮かべてしまう。和式時代は便座とは言わなかったから仕方ないけど。
人名も例外ではない。「ヴァスコ・ダ・ガマ」はガマ(蛙)という語感にインパクトがあるせいか、インド航路発見という偉業は忘れても、名前だけは忘れられない。また、帝政ローマ時代の偉人には「○○アヌス」とつく人物が多いが、後年、それが肛門を意味すると知ってなんとも変な感じだった。初代ローマ皇帝「オクタヴィアヌス」は帝政ローマの「水戸黄門」といったところか。
語感がぬるい人物もいる。神聖ローマ帝国の「オットー1世」は「おっと!」と驚いてばかりいる剽軽者のようであり、清の初代皇帝「ヌルハチ」は「ぬるい八兵衛」を略した、落語に出てきそうな人物を思わせる。また「八重洲」の語源となったオランダ人「ヤン・ヨーステン」は「よく転ぶ人」のようでおかしい。むろん勝手な思い込みだが、連想で覚えると記憶には残りやすい。
ほか、デカルトの「コギト・エルゴ・スム」(我思う、ゆえに我あり)は「住む」を想起させ、芸術作品のモチーフ「メメント・モリ」(死を忘れるな)は「森進一」を連想させる。また、『アンネの日記』は生理を連想させるが、これは『アンネの日記』から取った広告コピー「これからは生理の日をアンネの日と呼びます」が由来だがら、生理を連想しても満更こじつけではない。(黒)



