言葉処 其の83「バカなお姫さんは物もらい」
2009-03-31
麦粒腫、俗に言うものもらいになり、切ったほうが早かろうと眼科に行ったが、中年の女医さんはなんだかんだ理由をつけてオペを拒む。「仕事でいろんな人と会うから、お岩さんみたいな顔では困るんですけど」と迫ると、「血を見るのが嫌で眼科医になったのよね」と嫌な顔(そんなのが理由になるかーい!)。結局切ってくれたけど、あんな意気地のない医者は初めてだった。
「ものもらい」は近畿圏では「めばちこ」と言い、西日本では「めいぼ」「めぼ」「めんぼ」という言い方も多いそうだ。ほかに「めもらい」「めぼいた」「めぼう」などがあり、熊本の「おひめさん」はなんだかかわいい。一方、宮城では「ばか」と言うとか。眼科医に「どうしました」と問われ、「ばかになりました」と答えたら、「ばかは元からだろう」なんて茶化されそうだ。
最も使用が多いのは「ものもらい」だが、これも一つの方言に過ぎない。「ものもらい」はうつると言われ、実際、感染者が使ったタオルなどで顔を洗えばうつるので、「人からもらった(感染した)」が言葉の由来のような気がする。しかし、本当は「他人から米などのものをもらうと(この病気が)治る」というのが語源なのだそうだ。なぜそう言われているのかは分からないけれど。
ほか少数の呼称を探すと、北海道の「めっぱ」があった。「めっぱ」は北関東から東北の日本海側にも流布しており、秋田・青森からの移民によって北海道に持ち込まれて定着したらしい。また、一部には「めんちょ」「めこじき」などの呼称もあり、「おでき」はかなり広範囲に渡っている。それにしても「おでき」とはずいぶんと大雑把だ。総称のおできとどう区別するのだろう。(黒)



