言葉処 其の71「丑年と牛」
2009年は丑年。牛というとのんびりしている印象が強く、「元旦に神殿に来た順に干支とする」と言われ、早くに出発したはいいが、ゴール直前になって頭に乗せていたネズミに一等賞を奪われるあたりは、なんとも間が抜けている気がする。この印象のせいか「鈍牛」といった言葉もあるが、本物は乳牛でも迫力があり、いつ「猛牛」に変わるか分からないと思うとかなり怖い。
英語では牛は雄か雌かで「bull、cow」と言い方が変わる。以前、「OX(オックス)」というバンドがあったが、これは去勢された牡牛。男性バンドで去勢はどうかと思うが、それ以上にグループなので「OXEN」と複数形にしてほしかった。ちなみに広島カープの「CARP」は単複同形。オリックス・ブルーウェーブは複数形にすると小波の集団に思えるから敢えて単数形にしたのだそうだ。
牛肉をはじめ、内臓などは部位によって言い方が変わり、ご存じのとおり、レバーはそのまんま「LIVER(肝臓)」から来ている。ボクシングの「リバーブロー」も「肝臓」で、でも、リブロースのRIBは肋骨。意外なのは、ハツが「HEART(心臓)」から来ていること。ハラミ(腹身)やミノ(蓑)は日本語で、ホルモン(ほおるもの)は関西弁と語源は多種多様のようだ。
「甲子」「戊辰」「壬申」などの十干十二支は10と12の組み合わせだから120通りあるはずだが、さにあらず。十干は10年で一周するが、このとき十二支が二つずれてしまうので、10×6の60年で還暦を迎える。十干は木火土金水の五行にそれぞれ兄弟がいて、木の兄なら「甲(きのえ)」、木の弟なら「乙(きのと)」と書く。2009年は「己丑(つちのとうし)」で「土」と「牛」。鈍牛で行くか、猛牛で行くか。(黒)



