言葉処 其の65「猫属に関する誤解」
2008-11-25
「猫」の「ネ」のN音は舌を上顎に密着させ、舌を引き剥がしつつ発音するから、粘り気や停留を感じさせる。猫が「家に付く」「寝てばかりいる」という印象をもたれがちなのもN音のせいで、S音やK音だったら猫の違う面がクローズアップされただろう。ちなみに猫が魚好きと思われているのは、古来日本人が肉より魚を多く食し、その残りものにあずかるしかなかったからだ。
ハイエナは確かに死肉を漁るが、普通に狩りもするし、犠牲となった個体を余すことなく食すのは今風に言えばエコだ。しかし、「ハイエナのような」と比喩されるようにあまりいい印象は持たれてはおらず、ハイエナにはいい迷惑だろう。齧歯類のレミングが集団自殺をすると言われているのもやはり誤解で、あれは狂騒、逃走と言うべきだが、ここにも人の思い込みがある。
豹は名前と実体とに誤解のある動物。豹はアジア、アフリカに生息する大型猫科の動物で、英語ではレパードと言う。姿かたちはジャガーそっくりだが、こちらはアメリカ大陸に棲む別種。パンサーは豹やピューマも意味するが、これは西洋で大型猫を指す総称(古語)であり、パンサーという種はない。ブラックパンサーは体毛を剃ると豹柄をしており、種としては豹だ。
チーターは頬に涙線という涙の跡のような線があるのが特徴で、快足を生かして草原で獲物を追いかける。豹が密林で待ち伏せするのとはだいぶ違うが、うまい具合に棲み分けたものだと思う。これら大型猫と小型猫(イエネコ、ヤマネコ)との決定的な違いは、吠えることができるかどうかに尽きる。ただ、アジアで独自の進化をした雲豹や雪豹は大型猫だが、咆哮はしない。(黒)



