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社員ブログ

言葉処 其の60「関西人は『か』がお好き」

2008-10-21

漫画『アタック№1』の歌詞は「苦しくったって悲しくったって」だったが、エアバンドが歌う『アブラゼミ(東京バージョン)』では「どんなにつらっても」と歌っている。作詞のカシアス島田(紳助)は関西の人なので「つらかっても」と言うが、共通語では「つらい」の連用形「つらく」に「ても」を付けて「つらくても」、または促音を伴って「つらくっても」と言う。


仮定を表す「ても」は、動詞なら「叱っても」「転んでも」、形容動詞なら「好きでも」「きれいでも」となり、形容詞の場合は「美しくても」「寂しくても」のように「くても」となる。で、「つらい」は形容詞だから「つらくても」が正解だが、「く」より「か」のほうが(特に関西圏の人には)発音しやすいので、歌詞としては「つらかっても」のほうがいいのかもしれない。


最近は「違かった」とか「違くて」と言う。英語のdifferentは形容詞だが、日本語の「違う」は動詞だから、「かった」ではなく「違った」でいい。「違くて」は正しくは「違って」、または意味からすると「ではなくて」だろう。ちなみに「違う」を「ちげえ」と言う若者言葉は、「すごい」を「すげえ」と言う式の江戸弁を模したものだから西日本の人には違和感があるという。


「気持ちかった」「きれいった」なる言い方もある。「気持ちかった」は「気持ちよかった」の略語だが、「きれいかった」とは? 「きれい」は形容動詞だから共通語では「きれいだった」だが、形容詞的に「きれいかった」と言ったほうが個人の感想というニュアンスが強く、また「つらかっても」同様、西日本では「きれいかった」もポピュラーな謂いだそうだ。(黒)