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社員ブログ

言葉処 其の59「邦題は惹句」

2008-10-14

小説『風と共に去りぬ』の原題は「Gone with the wind」、ボブ・ディランの名曲『風に吹かれて』は「Blowin’ in the wind」。サリンジャーの『ライ麦畑でつかまえて』は「The Catcher in the Rye」。原題に忠実でありながら邦題も詩的でいい。一方、意訳しないと日本人には分かりにくいものや、商業主義的にはストレートすぎる原題もあって、売る側の苦労が忍ばれる。


『俺たちに明日はない(Bonnie and Clyde)』、『黄昏(on golden pond)』、『史上最大の作戦(The longest day)』、『ビートルズがやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ!(A Hard Day’s Night)』などは、直訳や原題のままだったら、これほどのヒットにはならなかったかも? やはりタイトルは広告コピーであり惹句でもある。ちなみに上記の後の二つは水野晴郎の命名だそうだ。


ただ、『悲しき慕情』と『悲しき街角』、『愛がすべて』と『愛こそはすべて』など似たものも多い。また安易でありがちな修飾語がついていて気分が損なわれることもある。マイケル・ジャクソンの『今夜はビート・イット』の「今夜は」なんて要らないし、ポール・マッカートニーの『ひとりぼっちのロンリーナイト』は言い過ぎ。ひとりぼっちだからロンリーなんだってばよ!


タイトルは内容表示でありながら象徴的で、読んだあと、鑑賞したあとで「なるほど」と思わせてくれるのがいいと思うのだが、ときどきアイデアに窮してしまったのか、暴発したような突然変異が出てくる。たとえば、ホラー映画『Orgy of the Dead』。直訳すれば「死の宴」といったところだが、邦題は『死霊の盆踊り』だった。盆踊りって……手振りは似ているけど。(黒)