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社員ブログ

言葉処 其の51「重言と言うなかれ」

2008-08-19

「馬から落馬する」式の重複表現を重言と言い、これがおかしいと感じるのは、「落馬」一語で既に「馬から落ちる」の意味であるところ、さらに「馬から」が加わって「馬から馬から落ちる」という意味になってしまうからだ。「本を読書する」「車に乗車する」「店を開店させる」「金を借金する」「酒を飲酒する」「山に登山に行く」なども同じで、違和感を感じる、いや覚える。
ただし、新たな情報を加え、「三冠馬から落馬する」「課題図書になっている本を読書する」「大型バスに乗車する」「三号店を開店させる」「上納金を借金する」「大量の樽酒を飲酒する」「富士山に登山に行く」のようにすると重複感が薄れる。「山に登山」ではあたりまえだが、「富士山に登山」は必ずしもそうではないから、言うまでもないことを言うなよ感がなくなるというわけだ。
「古来」「従来」はそれ自体に「より」の意味があるから「古来より」「従来より」は言い過ぎ。「射程」は「射る距離」だから「射程距離」はおかしいとされている。「犯罪を犯す」「不信感を感じる」は会話ならいいが、別の動詞にするとよりよい。「歌を歌う」はどうか。字こそダブっているが、「歌」に「歌う」動作の意味はないから、これは重複ではない。「着物を着る」も同様。
というより、別に意味がダブっていけないわけではない。「超マジやべえ」と同じで、より強調して言うのであれば、「まず最初に」「後で後悔する」「余分な贅肉」「思いがけないハプニング」「とりあえずの応急処置」「後ろから追突」「時速10キロのスピード」「まだ未定」「最後の追い込み」「かねてからの懸案」だってかまわない。そう書いたとて誰も「被害を被る」ことはない。(黒)