言葉処 其の43「鶯はウグイス色?」
2008-06-24
ウグイス豆やウグイス餡の影響か、鶯色と言うと抹茶のような色を連想してしまうし、和色の鶯色も深緑に近い。では、実際のウグイスはというと、羽はごく地味な淡い茶色で、腹はクリーム色に近い。しかし、ウグイスは警戒心が強く、人に隠れてホーホケキョと鳴いているだけだから実物を見る機会は少なく、かくて緑褐色こそウグイスの色だと多くの人が思い込んでいる。
「梅に鶯」というのもその生態からすると疑わしい。ウグイスは藪の中にいて虫を餌としており、人前に現れて梅の蜜を吸うことはまずない。花の蜜を吸うのはメジロで、彼らは春先になるとよく椿の花の中に頭を突っ込んだりして嘴を花粉だらけにしているし、羽の色はそのものズバリ鶯色。つまり、「梅に鶯」のウグイスとはメジロの見間違いということ。今はこれが定説だ。
ちなみに、メジロは、二匹が枝に止まっていると、次にやって来た三匹目は必ずその中間に割り込む。四匹目、五匹目も同じで、はじき出された個体はまた中のほうに割り込んでいく。間に入ったほうが外敵に襲われにくいからだが、隙間のないところに上から覆いかぶさるようにして割り込んでいく姿はさながら満員電車で、ここから「目白押し」という言葉が生まれた。
カッコウは託卵して育児をしないが、対照的に、エナガはつがいになれなかった個体が仲間の夫婦の子育てを手伝う。俗にヘルパーと言うが、なんだかいじましい。オシドリは繁殖期こそ仲睦まじいが、翌年はまた違う個体とつがいになる。だから毎年離婚する夫婦こそ「おしどり夫婦」と言うべきだが、むろんオシドリに罪はなく、悪いのは勝手に思い込んだ人のほうだ。(黒)



