言葉処 其の37「略語の不思議」
2008-05-13
日本語の略し方でもっとも多いのは、頭文字のように語幹の頭を二音節または一音節ずつ取ったものだろう。たとえば生保(生命保険)、就活(就職活動)、入試(入学試験)、ラノベ(ライトノベル)、東大(東京大学)などがそうだ。また、ゴスロリ(ゴシック・アンド・ロリータ)やファッキン(ファーストキッチン)など、略語が言いにくいので一部を変えている例もある。
(アル)バイト、(インター)ネットなどは言葉の前半部分を省略した略語で、逆にコンビニ(エンスストア)、アニメ(ーション)、高速(道路)、夜行(列車)などは言葉の後半を省略したもの。同様の例に、携帯電話の略である「携帯」があるが、この場合はもともと「携帯」という言葉があるので、「携帯を忘れた」と言われると「携帯し忘れた」のか「携帯電話を忘れた」のか迷う。
空母(航空母艦)、尺八(一尺八寸)、実存(現実存在)、酎ハイ(焼酎ハイボール)は真ん中を採り、逆に着歴(着信履歴)は両端を使っている(着信拒否の略の着拒は頭文字なのに)。北海道大学は北大なのに北海道新聞はなぜ道新か、コミックマーケットはなぜコミマでなくコミケか。エンターテインメントはなぜエンタメか。それ以前に誰が決めたのか。疑問符は続く。
略語の多くは三~四音節だが、「公募ガイド」はそのまま言うには六音節と長く、かといって「公ガイ」では「公害」みたいでいやだ。また、「公募」や「ガイド」では普通名詞とかぶってしまうし、「公ド」や「募イド」「募ガイ」では何を略したのかよく分からない。結局、長いけど仕方なく「公募ガイド」と呼んでいるが、ときどき「広報ガイド」や「酵母ガイド」と間違われる。(黒)



