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社員ブログ

言葉処 其の35「『好き』と『LIKE』」

2008-04-29

助詞の「を」は名詞にくっつき、そのあとには動詞が来る。たとえば、「空を飛ぶ」「本を読む」など。ところが、「僕は君を愛している」はいいが、「僕は君好き」はなんかおかしい。実は英語の「LIKE」は動詞だが、日本語の「好き」は形容動詞である。だから、「瞳がきれいだ」とは言っても「瞳をきれいだ」とは言わないように、「僕は君を好き」は誤りということになる。
形容詞には「長い」のように「い」がつく「い形容詞」と、「好きな」のように「な」が付く「な形容詞」があるが、学校教育では「な形容詞」のほうを形容動詞として区別している。形容動詞は活用は動詞に似て、意味は形容詞に似た品詞だが、「好きだ」「好きです」と断定の助動詞で言い切った場合、「名詞+だ」と区別しにくい。《君は美人だ。僕は好きだ。》とか見かけは同じだから。
分類するには、後ろに「だ」や「です」が付くかどうかを見る。「好きです」はいいが、「見るです」はおかしいから、「見る」は形容動詞ではない、動詞だ(山本晋也監督は言うけどね)。さらに前に「とても」が付くかどうか。「とても好きだ」と言うからこれは形容動詞で、「とても本だ」とは言わないから「本」は名詞だ。名詞かどうかは前に「その」が付くかどうかで見分ける。
ところで、「を+動詞」は相性がいいのに、「を+可能動詞」となるとなんか変だ。「私は漢字を書ける」は、おかしいとは言わないが、「私は漢字が書ける」のほうがしっくり来る。理由は分からないが、「書け」では動詞の原形が欠けていて、かかり受けが阻害されるからではないか。そのせいか「書く」をむき出しにし、「私は漢字を書くことができる」とするとすっきり収まる。(黒)