言葉処 其の34「送り仮名のルール」
戦前は「変る」「終る」と書いたが、今は誤読を避けるため、これらの動詞は「変わる」「変える」、「終わる」「終える」と活用語尾から送る。「し」で終わる形容詞は「美しい」のように「し」から、また「か」「らか」「やか」の付く形容動詞は「静か」「朗らか」「軽やか」のように送る。副詞や接続詞は最後の一文字を付けて「更に」「必ず」「及び」とする。むろん原則であって例外はある。
「もうしこむ」といった複合語は元の言葉の送り仮名に準拠して「申し込む」と書き、片方だけ送って「申込む」とはしない。ただし特定の言葉が付いて「申込書」となることはある。「話」の場合、名詞に送り仮名はないから「お話をする」だが、動詞の場合は「お話しする」となる。ほか「隣の人と隣り合う」「人並みの並肉」「割と割り切る」といった区別をする言葉もある。
派生語も元になる言葉に準じる。「うごかす」は「動く」に準じて「動かす」。「うまれる」「とらえる」も「生む」「捕る」との整合性から「生まれる」「捕らえる」。「あせばむ」は「汗」という名詞に「あせば」という訓を当てるのには無理があるから「汗ばむ」。「あかるい」は活用語尾から送ると「明い」で、「明ける」に準じると「明かるい」だが、これは「明るい」とされている。
送り仮名のルールは国語審議会によって昭和34年に内閣告示、昭和48年、昭和56年にも改訂されて現在に至る。だから「学校で習った送り仮名と違う」と思うこともあるが、悪法も法なり、四の五の言っても始まらない。嫌なら誰もが納得できるルールを自ら作るしかないが、語源まで遡って日本語を整備するなら、逐一用語用字辞典にあたって暗記してしまったほうが早い。(黒)



