言葉処 其の23「死語の世界」
2008-02-05
「フーテン」や「ヒッピー」といった言葉が流行していた頃、「ボーイハント」と聞いて地名だと思ってしまった(それは房総半島)。今は逆ナンと言い、ナンの語源は軟派だが、これは難破船の難破だと思っていた。で、ナンパが功成るなどして男女ペアでいれば、当時は「アベック」と冷やかされたが、今なら赤面するのは言った本人だろう。
死語は言語学的には廃語と言い、70年代後半の「ナウい」や80年代初頭の「ぶりっ子」、90年代中頃の「チョベリバ」もそうだが、一気に流行したものは一気に色褪せる。だから、文章の場合、流行語は避けたほうがいい。流行語大賞に選ばれるような言葉はかなりヤバい。てゆーかチョー危険!(なんて書くと、あとで死ぬほど後悔することになる)。
「チャンネルを回す」は習慣が変わって死語化した。柳ジョージの歌詞に「俺のバラードに針置きな」とあるが、CD世代には「針を置く?」だろう。「ブラウン管を賑わす」といった慣用表現もハイビジョン時代にそぐわなくなった。ちゃぶ台、七輪という名称も絶滅危惧種。傘は大丈夫だと思うが、「こうもり」では通じにくい。ところで「E電」って知ってる?
劇画『巨人の星』には「よしんば」という接続詞がよく出てくる。これは言いまわしの死語というべきか。いかにも古臭い言葉という印象がある。ところが、最近、江國香織の小説の中に「弁当を使う」(持参の弁当を食べる)という言いまわしを発見し、これはむしろ新鮮だった。ということで紙幅が尽きました。今週はこのへんで「ドロン」します。(黒)



