言葉処 其の13「漢字の音読み」
2007-11-27
漢音は遣隋使や遣唐使、留学僧が持ち込んだ漢字の音で、呉音はそれ以前に朝鮮半島経由で日本に伝わり定着していた音を指す。「金」は漢音では「キン」だが、呉音では「コン」と読み、これに訓の「かね」や音便化した「かな」が加わり、日本語の読みは複雑になった。このほか鎌倉時代以降に入ってきた唐音(宋音)や慣用音もあるからややこしい。
ちなみに一歳年上の奥さんのことを「金の草鞋(わらじ)」と言うが、ある女性は自分を指して、「私は藁の草履(ぞうり)だから」と言ったそうだ。ワラのゾウリじゃ、そのまんまじゃん! それはともかく、一つ年上の女房は貴重ということで「キンの草鞋」と言う人が多いが、正しくは「かねの草鞋」。むろん、この「かね」はお金ではなく、金属性という意味だ。
読みが分からないとき、旁や脚から推測して読むことを百姓読みと言う。それで当たっていればいいが、「膏肓(こうこう)」を「こうもう」、「直截(ちょくせつ)」を「ちょくさい」とよんでしまうと恥を書く。ところが、「堪能(かんのう)」や「消耗(しょうこう)」は百姓読みの「たんのう」「しょうもう」のほうが慣用化し、今では正しい言葉になっている。
「三品」は「みしな」または「さんぴん」と読み、「さんしな」は重箱読みだ。「大地震」は「だいじしん」だが、大災害と区別して「おおじしん」と湯桶読みすることもある。「極地」は漢音の「きょく」なのに、「極寒」は呉音の「ごく(ごっ)」となる。熟語なら「極寒の極地で極道は究極の極貧を極力極楽に」でも読めるが、「極旨」といった新語になると一瞬迷う。(黒)



