言葉処 其の12「読みがなの不思議」
2007-11-20
女性に誘われていよいよというときに、男が出てきて金品を巻き上げる。これを「美人局」と言い、もとは中国の『武林旧事』にある犯罪だが、日本語では、これに「サイコロ博打の筒を細工する」という意味の「筒持たせ」を当てて「つつもたせ」と読ませる。漢字の意味と読みは無関係なので、「美人(つつ)・局(もたせ)」のように分けることはできない。
「香具師(やし)」に至っては音数のほうが少なく、「香具」で「や」と読むのかと思ってしまう。「迷子」は「まい・ご」のように思えるが、これは「昨夜(ゆうべ)」「飛鳥(あすか)」などと同じく二字に一訓を当てた熟字訓だから、「迷子」二字で「まいご」だ。「台詞(せりふ)」「二十歳(はたち)」「七夕(たなばた)」「心太(ところてん)」なども同様である。
「詩歌」は「しい・か」か、それとも「し・いか」なのかと悩むが、本来は「しか」だ。「し」を始めイ段の言葉は「し~~~」のように伸ばしていると最終的に「い」になってしまうが、「しか」が言いにくいので「し・か」のように間を空けて発音しているうちに、SIのIが独立して「しいか」になった。「夫婦(ふふ)」が「ふうふ」になったのも同じ理由だ。
「見出す」はどうか。常用漢字では「出」は「だ」だから「みい・だす」とも思えるし、「詩歌」の例のように「み・だす」が変化したものとも思えるが、「出」は「日出る処の天子」のように「いづ」とも読み、「み・いだす」が正解。ちなみに「いづ」は「でる」という意味だが、「いず」とすると「でない」の意となり、意味が反対になる。(黒)



