言葉処 その11「当て字」
2007-11-13
小学生の頃、マンガの中に「部室」というセリフがあり、「へや」というふりがながついていた。「へえ、これで『へや』と読むのか」。知った途端、使ってみたくなった。早速作文の授業のときに無理やり使い、ご丁寧に「へや」というふりがなまでつけて提出したところ、訂正されてかえってきた。このことを家族に話すと、「ばっかだな、当て字だよ」と。
当て字というと、「流行(はや)る」とか「珈琲(コーヒー)」とか、あるいは「読書(ひまつぶし)」といった言葉遊びを思い出すが、たとえば「山」という漢字が大陸から渡ってきて、大和言葉の中にその意味に当たるものを探すと「やま」、だから「山」と書いて「やま」と読まそうというのも当て字だろう。つまり、訓はみな当て字ということになる。
そう考えてみると、「部室」と書いて「へや」と読ませるのも当て字ながら、「へや」という訓に対し、その意味に合う漢字を当てて「部屋」と書くのも当て字ではないのかなと思う。「部」は「べ」であり「へ」ではないが、英語で言えば意味はdepartmentであり、意味も音も近いからちょうどいいやってな具合で当てられたものではないのかしらん。
ただ、一般的に「部室(へや)」は当て字だが、「やま」を当て字だと言う人はいないし、「部屋」とか、「昨日(あす)」といった熟字訓に関しても同様だ。しかし、一般化されているかどうかはどんな基準で決めるのだろう。案外感覚的に決めているのかもしれないが、意味という境界の曖昧なものに対しては、結局はそれしかないのかもと思ったりもする。(黒)



